2010 Fiscal Year Annual Research Report
bicoidモルフォジェンの変動に対する発生調節機構とその進化
Project/Area Number |
20570100
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
高野 敏行 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 准教授 (90202150)
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Keywords | 進化 / 発生・分化 / 頑健性 / モルフォジェン / bicoid |
Research Abstract |
ショウジョウバエの初期胚の前後軸は,前端から後端に向かって作られるBICOIDタンパクの濃度勾配(モルフォジェン)によって形成される.一方で,BICOIDモルフォジェン濃度の変動に対し個体は調整・緩衝する能力を備えている.この初期胚の調節能力について1)複数種のスクリーニングの組み合せ解析による,過剰量のbicoidに対する調節機構に働く遺伝子の同定;2)自然集団から確立した染色体系統の調節能力の評価;3)調節能力に劣る系統の多面発現効果と他の弱い突然変異との複合効果の検証;4)6コピーのbicoidという人為淘汰による調節能力の実験室内の進化の検証が本研究の目的である.本年度はこのうち1)の調節機構に働く遺伝子の同定を精力的に行った.過剰コピー数のbicoid遺伝子をもった母親から生まれた胚では頭部の予定領域が拡張する.しかし,この発生予定運命の変更は頭部予定領域での細胞死によって調節される.アレイによる発現の比較解析と欠失染色体による遺伝学的スクリーニングから,この頭部予定領域の拡大に伴う細胞死に関わる候補遺伝子としてcg15479を同定した.この遺伝子について,1)成虫原基を用いて強制発現によって細胞死が誘導されること,2)2重鎖RNA導入による遺伝子発現のノックダウンによって過剰量のBICOID存在下で顕著にふ化率が低下することを見いだした.cg15479が実際に発生予定運命の修復に細胞死を通じて必須の役割を果たしていることを強く示唆する.この発見は今後,修復カスケードの全容の解明へと進める出発点となる.以上の成果を複数の学会・研究集会で発表した
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