2009 Fiscal Year Annual Research Report
転写制御因子NPAS2が酸化還元または一酸化炭素を利用し転写制御を行う機構の解明
Project/Area Number |
20570121
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 毅 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 助教 (30343742)
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Keywords | 時計蛋白質 / 転写制御 / DNA結合 / ラマン分光法 / NPAS |
Research Abstract |
本研究は、体内時計タンパク質の一つと考えられているNPAS2による転写制御機構を明らかにすることを目的としている。NPAS2はBMAL1というタンパク質とヘテロ二量体を形成し、NADH存在下で、特定のDNA配列と結合する。本年度は、まず初めに、BMAL1の発現・精製条件の検討を行った。初年度の研究から、BMAL1は発現効率が悪く、不溶性になりやすいことがわかっていたので、培養温度、培養時間、培養スケール、回転数、培地組成など様々な条件を詳細に検討することにより、かろうじて分光学的手法で測定できる程度の量が精製できるようになった。そこで、NADHの結合によるNPAS2の構造変化を活性中心であるヘムの振動モードをラマン分光法を用いて観測することにより検討した。ヘムのビニル基及びプロピオン酸基のモードからタンパク質内部及び溶媒界面に関する情報、ヘムとタンパク質の唯一の結合であるFe-His伸縮振動から活性中心周りに関する情報が得られると期待された。その結果、NADHがNPAS2に結合することによりヘムのビニル基のモードがシフトするが、ヘテロ二量体を形成しても変化しないこと、ヘムとタンパク質の唯一の結合であるFe-His結合は全く影響を受けないことがわかった。このことから、多くのヘムタンパク質では、構造変化という情報をタンパク質と活性中心の結合を通じで伝えるのに対し、NPAS2では、疎水場に埋め込まれたヘムのビニル基周辺の弱い相互作用を通じ伝達することがわかった。ラマン分光法では、活性中心近傍の構造変化しか得られないので、全体構造の情報を得るため、NMRを測定したが、NPAS2が多量体化し、スペクトルが広幅化したため、解析可能なスペクトルは得られなかった。しかし、精製条件を検討することにより、二量体で精製することが可能になり、来年度の研究につなげることができた。
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