2008 Fiscal Year Annual Research Report
有毒微量元素とレドックスシグナルによる転写調節因子Idの活性変換
Project/Area Number |
20570128
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
黒岡 尚徳 University of Fukui, 医学部, 准教授 (00293879)
|
Keywords | HLHタンバク質 / NES活性 / Id3 / 有毒微量元素 / システイン / 初期応答遺伝子 / Ets型転写因子 / 転写抑制 |
Research Abstract |
哺乳類で4種類同定されているHLHタンパク質ファミリーIdは、bHLH型転写因子の機能抑制因子であり、腫瘍化細胞や種々のがん組織で発現の亢進が示されていることから、がん遺伝子として認識されている。研究代表者はこれまで、Idタンパク質の細胞内局在制御の研究を行い、Id1とId2が異なるアミノ酸配列に依存するNES活性を持つことを明らかにしてきたが、Id3には同様の配列があるにも関わらず、NES活性が認められなかった。そこで様々な条件を検討した結果、ヒ素やカドミウムなどの有毒微量元素が、Id3の細胞内局在を細胞全体から細胞質へと限局させることを見出した。今年度は主に、その分子基盤の解析を進め、それら有毒微量元素による細胞応答における、Id3の役割について検討した。ヒ素やカドミウムはシステイン残基に強い親和性を持つため、それらの変異体を作製し解析を行ったところ、N末端領域の10、15、16番目のシステインが細胞質への集積に必要であることが判明した。システインに親和性を持たない亜鉛、鉄、銅、コバルト、ニッケル等の金属は、Id3の細胞内局在を変動させないことから、ヒ素やカドミウムはおそらくId3の3つのシステイン残基に直接結合し、通常は不活性な状態にあるNES活性を出現させるものと考えられる。また細胞を有毒微量元素で処理すると、初期応答遺伝子の発現が上昇するが、その際にEts型転写因子が重要な働きをすることがわかっている。Id3はEts型転写因子にも結合することから、毒性金属添加後の、Ets型転写因子に対するId3の転写抑制活性を測定したところ、野性型のId3に比べ、N末端領域のシステインをセリンに置換した変異体は、ヒ素やカドミウムによるc-fosやEgr1等の初期応答遺伝子の発現上昇を、より強く抑制することが判明した。
|