2009 Fiscal Year Annual Research Report
有毒微量元素とレドックスシグナルによる転写調節因子Idの活性変換
Project/Area Number |
20570128
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
黒岡 尚徳 University of Fukui, 医学部, 准教授 (00293879)
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Keywords | HLHタンパク質 / Id / システイン / レドックスシグナル / 過酸化水素水 / ホモ多量体 / ジスルフィド結合 / Eタンパク質 |
Research Abstract |
哺乳類で4種類同定されているHLHタンパク質ファミリーIdは、bHLH型転写因子の機能抑制因子であり、腫瘍化細胞や種々のがん組織で発現の亢進が確認されていることから、がん遺伝子として認識されている。研究代表者はこれまで、有毒微量元素のヒ素やカドミウムが、Id3タンパク質を細胞質に限局させることを見い出し、Id3タンパク質のN末端領域にある3つのシステイン残基が重要であることを報告した。この際、ヒ素やカドミウムが、システイン残基に直接結合することが予想されたため、本年度はシステイン残基を介してタンパク質の活性に影響を及ぼす、他のレドックスシグナルについて調べた。その結果、過酸化水素水処理により、細胞内のId1、及びId3タンパク質がホモ多量体を形成することが判明した。ホモ多量体は、還元剤存在下で単量体に戻るので、ジスルフィド結合によるものと考えられた。また、Id2タンパク質のホモ多量体形成能は非常に低いことから、Id1とId3のみに認められるN末端領域のシステイン残基の関与が示唆された。そこで、高いホモ多量体形成能を示すId3タンパク質について、どのシステイン残基が重要かを、変異体を作成して検討した。その結果、N末端領域だけでなく、すべてのIdファミリーに共通のHLHドメインとC末端領域のシステイン残基もホモ多量体形成に関わっていることが明らかになった。Id3タンパク質のホモ多量体形成反応は、低い過酸化水素水濃度で、かつ短時間に生じることから、生理的に何らかの役割を担っていると予想される。Idファミリーは、bHLH型転写因子のなかでもEタンパク質と強く結合するが、両者間で過酸化水素水によるジスルフィド結合形成の可能性もあり、引き続き解析を行っていく予定である。
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