2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムセンサー転写因子NPAS2による体内時計制御と情報伝達の分子機構
Project/Area Number |
20570139
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
佐上 郁子 Kyoto Prefectural University, 生命環境科学研究科, 教授 (10143033)
|
Keywords | シグナル伝達 / 分子認識 / 金属タンパク質 / 体内時計 / DNA結合活性 / ガス小分子 |
Research Abstract |
NPAS2のDNA結合活性のCOやNOによる制御の分子機構を明らかにすることを目的に、NPAS2のPASAヘムセンサードメインの各種変異体を作製し、DNA結合活性の解析を行った。その結果、NPAS2の野生型をはじめほとんどの変異体では、COの添加によってそのDNA結合活性が減少したが、C170AではCOによるDNA結合活性の阻害は生じなかった。これらの結果は、Cys170はCOがヘムに配位したというシグナルを機能へ伝達するために重要な残基であることを示唆している。そこで、C170S、C170M変異体を作製し同様の実験を行ったところ、C170Sは野生型と同様にCOによるDNA結合活性の阻害が見られたが、C170MはCOによる阻害を受けなかった。このことから、NPAS2のヘムセンサードメインがCOを感知しDNAに結合できない構造をとる為には、Cys残基の負極性が重要な役割を果たしていると考えられる。一方、NOはCOと同様にNPAS2の還元型ヘムに結合するが、NO添加によって野生型のDNA結合活性はむしろ増加することがわかった。さらに、NOが結合しない酸化型ヘムのNPAS2でもNOによるDNA結合活性の増加が観察されたことから、NOの効果にNPAS2ヘムへの結合は関与しないと考えられる。以上の結果は、NPAS2がCOを感知し機能変化を引き起こす構造要因が、既知のバクテリア系ガスセンサータンパク質とは異なること、またNPAS2のDNA結合活性は、COシグナルとNOシグナルを介して、それぞれ異なる機構によって制御されることを示している。また、NPAS2のPASAヘムセンサードメインの結晶化のための大量精製法を確立し、結晶化条件を検討中である。結晶化が出来れば、ほ乳動物では初めてのヘム/COセンサーの構造解析が可能となる。
|