2010 Fiscal Year Annual Research Report
アクチンファイバーの構造変化は新しい力学刺激受容機構として働く
Project/Area Number |
20570151
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辰巳 仁史 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20171720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曽我部 正博 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10093428)
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Keywords | アクチン / コフィリン / 機械刺激 / 張力受容 / 回転方向ゆらぎ / ねじれ / 光ピンセット / 一分子観察 |
Research Abstract |
筋細胞を思い浮かべればわかるようにアクチン線維は力発生要素である。一方で、細胞の中を注目すると、力によってアクチンモノマーが集合してアクチン線維を形成し、逆にアクチン線維に作用する力の大きさが減少すると、アクチン線維が脱重合する。このように力によるアクチン線維の動態の制御が想定されているがその分子的な実体は不明のままである。 アクチン線維を脱重合する代表的な分子にコフィリンついて、我々がこれまで実施した実験から、コフィリンはアクチン線維にかかる力学的な負荷に依存してアクチン線維を切断することが分かっている。一方で、電子顕微鏡によるコフィリンが結合したアクチン線維の観察とその分析からコフィリンがアクチン線維に結合するとアクチン線維のねじれピッチが変化することが知られている。アクチン線維が実際に活躍しているのは細胞内の環境は溶液である。そのため、溶液中のアクチン線維のねじれの大きさは揺らいる。我々の考える仮説は、アクチン線維のねじれ揺らぎにより大きく捩れた時にコフィリンがアクチン線維に結合し切断するというものである。そして、張力はこのねじれのゆらぎを減少し、その結果コフィリンのアクチンへの結合を抑制すると考えた。この仮説を検討するために、平成22年度の研究では、アクチン線維の回転方向ゆらぎの測定を行った。アクチン線維をガラス表面に変性ミオシンを介して結合する。このアクチン線維に蛍光粒子をつけた2ミクロン程度のビーズを着けてガラス表面から重力方向にぶら下げる(この時に線維にかかる力学付加は非常に小さい)。この蛍光粒子の位置の測定からビーズの回転を計測する。このようにして計測されたアクチン線維の回転方向のねじれゆらぎの振幅はアクチン線維がガラス表面から懸垂している場合(力学付加が非常に小さい)には大きく、光ピンセットによりビーズを懸垂方向に引っ張り、アクチン線維に負荷を掛けると揺らぎは小さくなった。これは上記の予想を裏付けるものであった。 コフィリンを投与した場合もアクチン線維のねじれが観察され、その回転方向の揺らぎは小さくなる場合があった。これは、コフィリンのアクチン線維への結合がアクチン線維のねじれ状態を安定化し揺らぎを小さくしたと解釈される。これは大変重要な結果であるが、今後のさらに実験的な検討を行う必要がある。また、このねじれ角の増加と切断の関係を調べることで、切断の分子メカニズムの解析の糸口が得られると考えている。
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