2010 Fiscal Year Annual Research Report
球状蛋白質のフォールディング自由エネルギー地形と中間体構造アンサンブルの探索
Project/Area Number |
20570153
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
槇 亙介 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30361570)
|
Keywords | 蛋白質 / フォールディング / 連続フロー法 / スタフィロコッカル・ヌクレアーゼ / エネルギー地形 / トリプトファン変異体 |
Research Abstract |
研究の目的 本研究は、蛋白質フォールディングの物理化学的機構を解明し、特に中間体の役割を明らかにすることを目標としている。モデル蛋白質スタフィロコッカル・ヌクレアーゼ(SNase)について、フォールディングの平衡論と速度論を詳細に検討する。SNase内に導入した唯一のTrp残基と5チオ2ニトロ安息香酸(5-thio-2-nitrobenzoicacid ; TNB)との間の距離を蛍光共鳴エネルギー移動によって評価し、部位特異的に構造形成を追跡することによってフォールディング機構を明らかにする。 研究内容 安定な蛍光ラベル修飾変異体の作成とその構造形成の評価:昨年度作成した変異体よりも安定な単一トリプトファン(Trp)変異体F76W/W140H (W76) SNaseおよび野生型蛋白質(W140)について、TNB修飾変異体を作成した。研究実施計画の通り、TNB修飾部位としては、導入による安定性、速度論およびエネルギー移動効率への影響を最小限にし、Trp残基-TNB間のForster距離が20A程度になる分子表面の部位から、W76 SNaseに対してはSer3、Lys45、Gln123を、野生型に対してはLys64を選択した。それぞれの部位にシステイン(Cys)残基を導入し、単一Trp/Cys変異体をそれぞれ300mg程度調製し、その一部にTNB修飾を施した。それぞれのTNB未修飾/修飾蛋白質の安定性及び(アン)フォールディング速度論を評価した。システイン残基導入やTNB修飾に際して、安定性への影響は-0.3から+0.7kcal/molと大きな影響はなかった。一方、速度論の様相はTNB修飾によって見かけ上変化があったものの、反応初期のふるまいには大きな変化は認められなかった。W76/C3-TNB変異体は、W76/C45-TNB、W76/C123-TNBに比較して、ほどけた状態から中間体に至るまでにTrp残基一TNB間距離の減少が顕著だった。また、W76/C45-TNB変異体は、反応過程において距離に変化が殆ど認められなかった。これらの結果は、SNaseのフォールディング反応初期において、N末端側のβバレルドメインにおける構造形成が顕著であることを示唆する。
|
Research Products
(5 results)