2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規RNAポリメラーゼII結合因子による遺伝情報発現の協調的制御機構の解明
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20570162
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
広瀬 豊 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究部, 助教 (00218851)
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Keywords | 遺伝情報発現調節 / 転写 / RNAプロセシング / RNAポリメラーゼII / リン酸化 / WWドメイン / Pin1 / PCIF1 |
Research Abstract |
遺伝情報発現において中心的な働きをするRNAポリメラーゼII(Pol II)は、その最大サブユニットカルボキシル末端領域に、転写中にダイナミックなリン酸化を受けるCTDと呼ばれる特殊な構造を有している。リン酸化CTDは、転写と他の遺伝情報発現過程(RNAプロセシングなど)の共役に重要な役割を果たしている。本研究は、申請者が同定した新規リン酸化CTD結合WWドメイン蛋白質(PCIF1、Pin1、WWOX)の機能検索を行うことによって、遺伝子発現諸過程の協調的制御機構を解明することを目的としている。 本年度は、PCIF1の機能を検索するために、(1)HeLa細胞を用いたクロマチン免疫沈降法による解析、(2)レポーターアッセイを用いた遺伝子発現調節能の解析、(3)ニワトリBリンパ細胞株DT40を用いた標的遺伝子破壊による機能解析、を行った。その結果、(1)PCIF1は恒常的に発現しているPol II遺伝子のプロモーター近傍に分布していた。(2)様々な転写活性化ドメインによるレポーター遺伝子の転写活性化が、PCIF1ノックダウンによって大きく亢進した。(3)トリPCIF1遺伝子破壊DT40細胞株を2株樹立し、野生型細胞株との比較を行ったところ、両ノックアウト株においてトリPin1発現の亢進が観察された。さらにノックアウト株をもとに、PCIF1を野生株と同程度発現する安定細胞株を樹立し、Pin1の発現レベルを解析したが発現は上昇したままであった。以上の結果より以下のことが示唆された。(1)PCIF1は転写初期段階のPol IIに結合し、遺伝子発現を負に制御している。(2)PCIF1とPin1の間には遺伝学的な相互作用が存在している。これらの結果は、脊椎動物においてどのように遺伝情報発現が調節されているかを理解する上で重要かつ新規な発見であると考えられる。
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