2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショック転写因子による発熱・炎症性サイトカイン遺伝子群の転写制御
Project/Area Number |
20570166
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
井上 幸江 安田女子大学, 薬学部, 教授 (60159978)
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Keywords | 遺伝子 / 熱ショック応答 / 炎症反応 / 転写因子 / ストレス応答 / サイトカイン / 生体防御 / 発熱 |
Research Abstract |
熱ショック転写因子HSF1は、熱ショック蛋白質Hspの発現誘導だけでなく、正常な個体の発生や維持に必須であることがわかってきたが、その分子機構は不明である。申請者らは、HSF1がクロマチンの構造変化を引き起こすことによってIL-6遺伝子の転写制御を行うという新しい分子機構を明らかにした。本研究では、その成果をさらに発展させ、HSF1がIL-6をはじめとする発熱-炎症に関わるどのような遺伝子群の発現制御に関わっているか網羅的に探索し、その転写制御機構を明らかにするとともに、その生理的意義を解明することを目的とする。 1)HSF1により転写制御をうける発熱・炎症性サイトカイン遺伝子群の転写制御機構の解明 発熱性サイトカインの1つIL-6はLPSによって誘導されるが、温熱ストレス前処理により、その発現が抑制された。この時、負の転写因子ATF3が温熱ストレスとLPSによって協調的に誘導合成された。そこで、LPSで誘導された116遺伝子のうち、温熱ストレスで抑制される86遺伝子について、ATF3欠損細胞やATF3発現ベクターを用いて解析した結果、IL-6を含む17遺伝子の発現がATF3に依存していた。 2)HSF1とATF3を介した発熱・炎症性サイトカイン遺伝子群の転写制御の生理的意義の解明 上記の結果は、HSF1がATF3を介して、発熱・炎症性サイトカイン遺伝子群の発現を抑制するというフィードバック機構が働いていることを示す。そこで、HSF1欠損マウス、ATF3欠損マウス、IL-6欠損マウスを用い、その生理的意義を解析したところ、HSF1欠損マウスとATF3欠損マウスでは、LPS投与による体温上昇が高進し、IL-6欠損マウスでは体温上昇が見られなかった。このことは、マウス個体においてもHSF1-ATF3による発熱・炎症サイトカイン遺伝子群の転写制御が個体の恒常性維持に必須であることを示す。
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Research Products
(8 results)