2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの組換えを介した複製の開始制御の分子基盤の解明
Project/Area Number |
20570171
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
凌 楓 The Institute of Physical and Chemical Research, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (70281665)
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / ミトコンドリア / 組換え / 相同DNA対合 / 除去修復 / ローリングサークル型複製 / 酸化ストレス応答 / DNA複製 |
Research Abstract |
出芽酵母のミトコンドリアにおいて酸化損傷塩基除去酵素Ntg1の働きによってミトコンドリアDNA(mtDNA)の複製開始領域に組換え依存型複製誘因である二本鎖DNA切断が特異的に導入されるメカニズムは不明であった。本年度は、mtDNAの複製開始点という特異部位における活性酸素種による損傷修飾が、Ntg1を介してmtDNAの複製開始に直接働くメディエーターとなり、mtDNAの複製の活性化に働くという仮説の検証の一環として、Ntg1による二本鎖切断形成を可能にした複製開始点領域の構造、Ntg1の生化学的特徴、及び酸化ストレスを強めた条件下でのmtDNAコピー数の変化について調べた。その結果、mtDNAの複製開始領域を含むDNA断片はこの領域を含まないDNA断片と比べて一本鎖DNAを特異的に切断する酵素に対する感受性が増え、部位特異的な二本鎖DNA切断に対して耐性を示すことが明らかとなった。また、従来知られていた、二本鎖DNAの酸化損傷部位にニックを導入するというNtg1の活性に加えて、精製したNtg1が一本鎖DNAの酸化損傷部位を認識し、一本鎖DNA切断を導入することを明らかにした。さらに、単離したミトコンドリアを低濃度の過酸化水素で処理するとmtDNAのコピー数がNtg1、及び相同DNA対合酵素であるMhr1の機能に依存して増加することも見出した。これらのことから、mtDNAの複製開始点で、露出した一本鎖DNA領域の酸化損傷部位を認識するNtg1は、一本鎖DNA切断を導入することで二本鎖DNA切断を形成させ、組換え酵素Mhr1に依存するmtDNA複製を促進することが示唆された。
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