2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの組換えを介した複製の開始制御の分子基盤の解明
Project/Area Number |
20570171
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
凌 楓 The Institute of Physical and Chemical Research, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (70281665)
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / 核酸 / ストレス / 酵素 / DNAの組換え / ミトコンドリア / Saccharomyces cerevisiae |
Research Abstract |
出芽酵母ミトコンドリアDNA(mtDNA)の組換えに働くMhr1タンパク質は、細胞にATPを供給する酸素呼吸機能の維持に必要である。組換え反応の中心反応は単鎖DNAが二本鎖DNAの相同領域に入り込むステップ(相同DNA対合)である。相同DNA対合は負の超らせんDNA構造をもつ環状二本鎖DNAを基質として試験管内でD-loopを形成させる反応で評価される。この反応はATPを必要とするRecAファミリーのタンパク質、もしくはRecAとは構造が異なるタンパク質がATPの非存在下で完成することができる。超らせんDNA構造が本当にRecAファミリー以外のタンパク質によるD-loopの形成に必要であるかどうかは長年に亘って議論されてきた。そこで、RecAファミリーに属しないMhr1が触媒する3本鎖(D-loopも含めて)構造の形成に超らせんDNA構造が必要であるかどうかを調べた。その結果、線状二本鎖DNAが負の超らせん構造の環状二本鎖DNAより3本鎖構造の形成にもっと適した基質であることが判明した。また、環状DNAを基質として用いた場合、正、或は負の方に捻れた超らせんDNA構造をリラックスさせるトポイソメラーゼIを反応液中に添加すると、Mhr1による相同DNA対合から生じた3本鎖構造の形成が促進された。トポロジー的解析から、その間、閉環状二本鎖DNAの正味のトポロジー的変化が起きていないことを明らかにした。これらの結果から、Mhr1が負の超らせんDNA構造を必要とせず、3本鎖構造の形成を効率的に触媒することで、RecAファミリーのタンパク質群の機能に類似して相同的DNA対合を行なうことが明らかとなった。また、ミトコンドリアにおいて、Mhr1が相同DNA対合反応を行なう際に、正味のトポロジー的変化を引き起こさずに、mtDNAをほどくことが示唆された。
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