2010 Fiscal Year Annual Research Report
結晶構造に基づいたFERキナーゼの生理作用と制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
20570194
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Research Institution | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
Principal Investigator |
増田 道隆 独立行政法人国立循環器病研究センター, 細胞生物学部, 室長 (00190364)
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Keywords | ナノバイオ / 生体分子 / BARドメイン / チロシンキナーゼ / 生体膜 |
Research Abstract |
本研究はN-末にBARドメインを持つ特異なチロシンキナーゼFerの結晶構造を決定し、それに基づきFerN-末の機能およびキナーゼ活性調節への関わりを調べ、Ferの機能的特異性を明らかにすることを目的として行われた。BARドメインは脂質膜に結合し、膜の変形を起こすドメインとして注目されている。FerのBARドメインの特徴として、そのC-末側にコイルドーコイル(CC)ドメインを持つことが知られている。CCドメインはp120カテニンとの結合部位であることが報告されており、Ferの細胞接着制御活性や細胞内局在に深く関与していると考えられていた。 21年度末にN-末の構造を決定し、BARドメインとCCドメインの関係を明らかにすることができた。結晶構造をもとに変異体を設計・発現させ、その機能解析を行った結果、p120カテニンとの結合は全く再現できず、この報告は誤りであるとの結論に至った。21年度に引き続き、22年度も結晶構造を基にした多数の変異体を作製し、その細胞内分布やキナーゼ活性などを調べた結果、Ferがなぜ脂質膜結合性BARドメインタンパク質としては例外的に細胞質の可溶性分画に存在するのかを、更に明確にすることができた。 一方、以前に報告されていたキナーゼ活性化変異体で、変異部位が今回明らかにしたN-末構造に含まれるものについても詳細な検討を加えた。これらもp120カテニン結合と同様、再現性が全くとれずアーティファクトと結論したが、論文投稿上困難を抱えることになった。しかし、BARドメインの変異により、人為的に脂質膜結合性と膜変形能を付与したFerのキナーゼ活性は2倍以上に上昇し、膜移行が活性調節に重要であることを示唆する結果を得た。これらの成果を論文として公表するための仕事を進めている。
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