2010 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ脳における高次神経構造構築機構の分子遺伝学的解析
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20570196
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古久保 克男 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (00272154)
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Keywords | 神経発生 / 脳 / ショウジョウバエ / 学習・記憶 / 遺伝子 / キノコ体 / 触角葉 / ホメオドメイン |
Research Abstract |
我々はこれまでに、脳における高次構造構築過程を制御する分子機構の理解のために、ショウジョウバエを材料として解析を行ってきた。とりわけ、学習・記憶をはじめとする高次神経機能の中枢であるキノコ体と、キノコ体の主要入力回路である触角葉投射神経について解析を行ってきた。unc-51は、セリン・スレオニンキナーゼをコードする進化的に保存された重要な神経発現遺伝子の一つであり、幼虫期キノコ体の中心繊維で強い発現を示す。これまでに我々は、UNC-51がアダプタータンパク質のリン酸化により、神経細胞における軸索輸送を制御している事を報告してきた。unc-51変異体は、キノコ体神経軸索と樹状突起伸長に顕著な異常を起こす。本年度は、unc-51遺伝子とさまざまな遺伝子との2重変異体の遺伝学的解析により、キノコ体形成においてunc-51がキネシン軽鎖遺伝子と顕著な相互作用をする事、また、unc-51変異体が示すキノコ体形成異常の多くが、unc-51とキネシン軽鎖遺伝子の2重変異体において再現される事を明らかにし、unc-51がキノコ体において軸索誘導と突起形成を制御するシグナル分子の軸索輸送に必須の機能を有する事を明らかにした。また、進化的に保存されたホメオボックス遺伝子であるhomothoraxが、触角葉投射神経で発現することを明らかにし、homothoraxが側方神経芽細胞の分裂と維持に必須であること、さらに、背側投射神経の正確な樹状突起投射パターンの形成に重要な機能を持つ事を明らかにした。これらの遺伝子はヒトやマウスにも保存されており、本研究結果は、これらの因子が脳の高次構造形成に必須の機能を待つ事を示すものであり、ショウジョウバエにおける更なる分子遺伝学的解析によって、ヒト脳の形成と機能の理解に重要な手がかりを与えるものと期待される。
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