2008 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの生殖系列における幹細胞への発生運命決定機構
Project/Area Number |
20570213
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
浅岡 美穂 National Institute of Genetics, 個体遺伝研究系, 助教 (40370118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広海 健 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 教授 (70291888)
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Keywords | 幹細胞 / 幹細胞ニッチ / 生殖細胞 / ショウジョウバエ / 卵巣 / 始原生殖細胞 |
Research Abstract |
幹細胞は、多くの高等動物組織の発生や維持に中心的な役割を果たしており、その形成機構の解明は発生学や再生医療において重要な課題の一つである。幹細胞の性質や機能は周りにある細胞が作り出す微小環境(ニッチ)により維持されることが明らかにされているが、発生過程における幹細胞の形成機構については未だ不明な点が多い。本研究ではショウジョウバエの生殖幹細胞をモデルシステムとして、生殖幹細胞の形成機構を分子レベルで解明することと目指した。ショウジョウバエの卵巣では生殖幹細胞は胚卵巣の前半部にある始原生殖細胞に由来し、後半部の始原生殖細胞は卵細胞や哺育細胞に直接分化する。胚卵巣中の始原生殖細胞は幼虫期に未分化状態を保ったまま増殖し、幼虫-蛹移行期に卵巣前方のニッチ細胞に接触して生殖幹細胞となり維持される。これまでに幼虫期の始原生殖細胞では早期の卵細胞への分化が抑制されており、早期に分化過程に入った始原生殖細胞は分化途中で致死となり、生殖幹細胞形成に貢献しないことが示唆されている。我々は本年度、始原生殖細胞の早期分化抑制に関わる新規遺伝子Patchpaste(Pap)を単離・解析した。その結果、Papは胚卵巣と幼虫卵巣で前半部にある始原生殖細胞と直接接する体細胞の細胞膜上で発現することが明らかとなった。Pap突然変異体ではこれらの前半部の始原生殖細胞が幼虫期に早期に卵細胞への分化過程に入ることが明らかとなった。そのような始原生殖細胞の早期分化が見られる個体の成虫卵巣では、形成される生殖細胞数が正常個体より減少することも明らかとなった。以上の結果から、Papは幼虫卵巣前半部の体細胞で発現し、直下にある始原生殖細胞の早期分化を抑制することが明らかとなった。この早期分化抑制は生殖幹細胞の前駆体である卵巣前半部の始原生殖細胞を幹細胞に分化できる状態に維持すると考えられる。
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Research Products
(2 results)