2009 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの生殖系列における幹細胞への発生運命決定機構
Project/Area Number |
20570213
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
浅岡 美穂 National Institute of Genetics, 個体遺伝研究系, 助教 (40370118)
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Keywords | 幹細胞 / 幹細胞ニッチ / 生殖細胞 / ショウジョウバエ / 卵巣 / 始原生殖細胞 |
Research Abstract |
幹細胞は組織細胞を生み出す未分化な細胞で、細胞分裂により自分と同じ幹細胞と分化過程に入る前駆細胞を作る。多くの高等動物組織において、この幹細胞の性質は周辺細胞(ニッチ細胞)が作り出す特殊な場(ニッチ)により維持されることが明らかにされているが、発生過程における幹細胞の形成機構については未だ不明な点が多い。ショウジョウバエの卵子幹細胞は、幼虫-蛹移行期に形成直後のニッチ細胞と接するようにして現れ、ニッチ細胞が分泌する液性因子を受け取って未分化状態に保たれる。我々は以前、細胞系譜解析により、卵子幹細胞が胚卵巣の前半部にある始原生殖細胞に由来することを明らかにした。胚卵巣前半部の始原生殖細胞は、幼虫期に未分化状態を保ったまま卵巣前方に移動し、幼虫-蛹移行期までに卵巣前方でニッチ細胞に接着して生殖幹細胞として維持される。一方、胚卵巣後半部の始原生殖細胞は、幼虫の終わりに卵巣後方で配偶子形成過程を開始し、幹細胞を経ることなく卵細胞に分化する。以上のことは、始原生殖細胞は卵細胞に分化する能力を持ち、胚卵巣前半部に位置する始原生殖細胞のみが選ばれ生殖幹細胞に寄与することを示した。我々はこの選択機構を理解するため、新規膜蛋白質Pap/Dpr17を単離・解析して来た。今年度、pap遺伝子を欠く突然変異系統の表現型を詳細に解析した結果、pap突然変異系統では幼虫期の終わりに前方にある始原生殖細胞が未分化状態を保てずに、後方の始原生殖細胞のように分化過程に入ることが明らかとなった。以上の結果から、pap突然変異系統では前半部の始原生殖細胞の発生運命が後半部の始原生殖細胞の運命に転換した可能性が考えられる。来年度はこの可能性を検証する。
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Research Products
(4 results)