2008 Fiscal Year Annual Research Report
順遺伝学を基盤とした造血・心血管発生の分子メカニズムの解明
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20570216
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
川原 敦雄 National Cardiovascular Center Research Institute, 循環器形態部, 室長 (10362518)
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Keywords | 心臓発生 / ゼブラフィッシュ / スフィンゴシン-1-リン酸 / 輸送体 / 変異体 / 原因遺伝子 |
Research Abstract |
私は、ゼブラフィッシュのゲノムに突然変異を誘導し、造血・心血管発生に異常を示す新規ゼブラフィッシュ変異体の作製を行った。本研究は、ゲノム・マッピングにより変異体の原因遺伝子の同定を行うことにより、脊椎動物の造血・心血管発生を制御する新たな機能分子を同定することを目標とする。平成20年度は、心臓前駆細胞の移動に異常を示し二股心臓の表現型を示すko157変異体の機能解析を行った。ゼブラフィッシュにおける心臓前駆細胞の移動は、脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(sphingosine-1-phosphate:S1P)が制御していることが分かっている。ko157変異体の表現型は、S1P受容体の変異体S1P_2と非常に似ていた。平成20年度は、以下の事柄を明らかとした。 1.ko157変異体の原因遺伝子は、12回膜貫通ドメインを持つ新規膜分子Spns2であった。 2.Spns2とS1P_2との間には、遺伝学的な関連性が認められ、spns2^<ko157>変異体の表現型をS1Pの注入により回復できることから、Spns2は、S1P_2の上流で機能していることが考えられた。 3.Spns2は、S1Pの輸送体として働くことを明らかとした。 4.Spns2は、初期発生過程で胚体外の組織である卵黄多核層に強く発現が誘導されることを明らかとした。 5.卵黄多核層におけるSpns2の機能を阻害すると、spns2^<ko157>変異体と同様二股心臓の表現型を示し、また、spns2^<ko157>変異体の二股心臓の表現型は、Spns2 mRNAを卵黄多核層に注入することにより回復できることを明らかとした。 これらの実験結果から、S1P輸送体であるSpns2が、S1Pの放出を初期発生過程で制御することにより、心臓前駆細胞の移動を調節していると考えられた。この研究は、心臓発生の新しい分子機序を明らかにした。
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Research Products
(6 results)