2010 Fiscal Year Annual Research Report
順遺伝学を基盤とした造血・心血管発生の分子メカニズムの解明
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20570216
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
川原 敦雄 独立行政法人国立循環器病研究センター, 細胞生物学部, 室長 (10362518)
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Keywords | 心臓発生 / ゼブラフィッシュ / 血管発生 / 変異体 / 原因遺伝子 |
Research Abstract |
私は、化学変異原を用いてゼブラフィッシュのゲノムに点突然変異を誘導し、心臟や血管発生過程に特異的な異常を示すゼブラフィッシュ変異体を作製した。それら変異体を造血・心血管発生の可視化系統と掛け合わせ、表現型の性状を蛍光タンパク質の発現として可視化し、形態学的な解析を行った。さらに、変異体の原因遺伝子を同定し、心臓・血管発生での機能を解析した。平成22年度は、以下の研究成果が得られた。 1. ko157変異体の原因遺伝子が新規膜分子Spns2であり、Spns2が脂質メディエーターであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の輸送体として機能することをこれまでに明らかとしているが、ko157/Spns2変異体において、様々な器官形成に対するマーカー遺伝子の挙動を調べた。その結果、赤血球、血管細胞、腎臓、内胚葉のマーカー遺伝子の発現などに顕著な違いは認められなかった。 2. ko157/Spns2変異体の3日胚において、頭部腹側に形態学的な異常が認められたので、アルシアンブルー染色を行い頭部軟骨の形成を調べた。その結果、下顎の構造が野生型に比べて、前後軸に短いことが明らかとなった。1日胚において、顎の形成に重要なホメオボックス型転写因子であるdlx2の発現を調べたが、野生型との間で顕著な違いは認められず、1日胚から3日胚の間の顎の形成過程に何らかの異常を生じることが示唆された。 3. ko157/Spns2変異体胚と野生型胚からRNAを調整し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、200程の遺伝子の発現に関して、両者の間で顕著な発現の違いが認められた。アポリポタンパク質やホスホリパーゼC等の脂質代謝に関与する遺伝子も含まれているので、今後、定量PCR法を用いko157/Spns2変異体での発現の挙動を確認するとともに、同定された候補遺伝子とSpns2-S1Pシグナル伝達との関連性を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(5 results)