2008 Fiscal Year Annual Research Report
複合体結合能の予測と数理モデルに基づくウイルス適応度ランドスケープの構築
Project/Area Number |
20570223
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
渡部 輝明 Kochi University, 教育研究部医療学系, 助教 (90325415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 洋久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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Keywords | ウイルス / 変異株 / 固定確率 / タンパク質構造 / 結合能 / アミノ酸置換 / 数理生物学 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
近年多発している新興感染症の病因となるRNAウイルスはヒト以外の動物を自然宿主としている。ウイルスの変異やヒトの活動などが原因となりヒトに偶然感染したことでヒトの病原体となったのである。ウイルスがヒトを宿主として適応するためにはヒトの細胞受容体への結合を可能とする必要がある。ヒトへ適応したウイルスは細胞受容体への結合能を維持しつつ生体防御機構からの攻撃をかわしていかなければならない。このような感染現象におけるウイルス側とヒト側の分子間での複雑な相互作用にウイルスの宿主への適応度を定義し、ウイルス変異の予測を行うことが本研究の目的である。平成20年度では数理生物学的な手法を用いて、正常細胞、感染細胞、ウイルス、免疫グロブリンの4者からなる宿主生体内でのウイルスライフサイクルを適切に表現し、タンパク質構造予測の手法を用いて変異ウイルスの出現を可能にした動態方程式を提案した。これを解くことによって変異ウイルスが既存のウイルスと同じ宿主内で如何に棲み分けを行うかを知ることが可能となり、宿主集団に感染を広げていく能力を表す適応度を定義することが出来る。その適応度を基に集団遺伝学で変異の固定確率を計算するための拡散理論を用いて宿主集団内での固定確率を計算した。これによりスパイクタンパク質表面上の各アミノ酸残基における変異と宿主集団内での固定確率を結びつけることが可能となった。0.9を上回る非常に高い固定確率を持つ変異が出現し得ることが示された。そのような変異はスパイクタンパク質表面上の数カ所で起こり、受容体との結合能を上げる、もしくは抗体との結合能を下げることで(更にはその双方で)宿主内での増殖率を上げ、宿主集団への感染拡大を実現している。
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Research Products
(2 results)