2009 Fiscal Year Annual Research Report
複合体結合能の予測と数理モデルに基づくウイルス適応度ランドスケープの構築
Project/Area Number |
20570223
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
渡部 輝明 Kochi University, 教育研究部・医療学系, 講師 (90325415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 洋久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
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Keywords | ウィルス / 変異株 / 固定確率 / タンパク質構造 / 結合能 / アミノ酸置換 / 数理生物学 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
タンパク質は環境への機能適応を軸に進化していると言え、そのほとんどの場合に相互作用する相手となる分子が存在する。インフルエンザウイルス、SARSコロナウイルスの宿主細胞受容体に結合するタンパク質の変異を宿主免疫系の抗体分子との相互作用を考慮して解析した。ウイルスは細胞受容体への結合能を維持しつつ免疫系から逃れるため、抗体結合部位は強い多様化圧を受け局所構造を変化させる。我々は以前、インフルエンザヘマグルチニンと抗体の複合体構造を基に、抗原抗体結合能の長期変化を解析し、ある抗体は一旦結合能を失いその後再び回復することを明らかにした。ウイルス集団が構造変化コストと免疫系回避の利得を巧にバランスさせて適応していく様子が示唆されたと考えている。本年度は多様化圧下の部位を最尤法による分子進化推定問題として調査した。立体構造上の距離で平滑化する局所尤度法を開発したところ、混合分布モデルによる非同義/同義置換速度の比に見られた偽陽性が抑えられた。これをインフルエンザヘマグルチニンに適用したところ、受容体結合部位周辺において強い多様化圧が認められ、結合能指標の妥当性が示唆された。この指標を正常/感染細胞、ウイルス、抗体からなる宿主内動態方程式の係数に適用して、SARSコロナウイルスについて細胞受容体及び抗体との結合能のバランスが突然変異によりいかに変化するかを予測し、変異ウイルスの適応度地形上での移動を調べた。すると抗体結合部位の特質によって変異ウイルスの宿主集団内での固定確率に違いが出ることが判明した.
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Research Products
(2 results)