2010 Fiscal Year Annual Research Report
複合体結合能の予測と数理モデルに基づくウイルス適応度ランドスケープの構築
Project/Area Number |
20570223
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
渡部 輝明 高知大学, 教育研究部・医療学系, 講師 (90325415)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸野 洋久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00141987)
|
Keywords | ウイルス / 変異株 / 固定確率 / タンパク質構造 / 結合能 / アミノ酸置換 / 数理生物学 / 集団遺伝学 |
Research Abstract |
本研究では環境への機能適応を背景としたタンパク質分子進化に焦点を当て、ウイルス変異を解析している。これまでインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルスの宿主細胞受容体に結合するタンパク質の変異を宿主免疫系の抗体分子との相互作用を考慮して解析してきた。ウイルスは細胞受容体への結合能を維持しつつ免疫系から逃れるため、抗体結合部位は強い多様化圧を受け局所構造を変化させる。正常/感染細胞、ウイルス、抗体からなる宿主内動態方程式の係数に開発した結合能指標を適用し、SARSコロナウイルスについて細胞受容体及び抗体との結合能のバランスが突然変異によりいかに変化するかを予測した。変異ウイルスの適応度地形上での移動を調べたところ、抗体結合部位の特質によって変異ウイルスの宿主集団内での固定確率に違いが出ることが明らかとなった。本年度は、昨年度に実施した多様化圧下部位での最尤法による分子進化推定を拡張・発展させて、タンパク質にかかる多様化圧の部位における依存性を解析した。昨年度は立体構造上の距離で平滑化する局所尤度法を開発したが、最終的な目標とする進化系統過程における多様化圧変異の検出を実現する上で困難が生じることになる。そのため本年度は各アミノ酸残基における多様化圧を個別に取り扱うイジング模型によるギブスサンプラーを開発した。これをインフルエンザヘマグルチニンに適用したところ、受容体結合部位周辺における強い多様化圧が認められた。更にイジング模型による解析の特徴はパラメータとして導入されている"温度"にある。これはタンパク質の適応活性度として解釈可能であり、タンパク質の分類に新しい指標を導入することが可能となる。
|