2010 Fiscal Year Annual Research Report
XLFを介したDNA損傷認識を制御する新しい細胞内情報伝達系の解析
Project/Area Number |
20579003
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
矢野 憲一 熊本大学, バイオエレクトリクス研究センター, 教授 (70311230)
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Keywords | DNA損傷 / DNA修復 / 非相同末端連結 / DNA二重鎖切断 / Ku / XLF |
Research Abstract |
最も重篤な細胞障害の一つであるDNA二重鎖切断(DNA double-strand break, DSB)はヒト細胞においては主に非相同末端連結(Non-homologous end-joining, NHEJ)によって修復される。NHEJはDSB修復のみならず機能的な免疫グロブリン遺伝子の形成にも必須であるため、NHEJに関連する遺伝子の異常は放射線高感受性と免疫不全を併発する遺伝病の原因となりうる。2003年に放射線高感受性と免疫不全を示すが既存のNHEJ関連遺伝子に異常を持たない新たな遺伝病患者が報告され、2006年に原因遺伝子としてXLFが同定された。この遺伝病の多くの患者ではXLF遺伝子座に大きな欠失が認められるが、少数の患者においては一アミノ酸置換がXLFの機能不全を引き起こしていることが報告され、次いでこの一アミノ酸置換を持つXLFは核ではなく細胞質に局在することが明らかとなった。私たちはXLFの機能解析を行い、XLFがKu依存的にDSB部位に集積すること、Ku-XLF相互作用はDNAの上でのみ起こるユニークな反応であること、このKu-XLF相互作用はイノシトール6リン酸によって強力に促進されることを示した。またKuとXLFを含むNHEJ基本因子はin vivoにおいてもin vitroにおいてもタンパク質間相互作用の相乗効果がみられることが明らかとなった。さらにXLFの細胞内局在には他のNHEJ基本因子との相互作用は必須ではなく、一部の遺伝病患者にみられる一アミノ酸置換を持つXLFタンパク質は核-細胞質間の分子輸送が細胞質方向へと傾いていることを示した。以上の結果と最近の他の研究をふまえ、Ku-XLF相互作用を中心としたNHEJの分子機構について新たなモデルを提案した。
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Research Products
(8 results)