2010 Fiscal Year Annual Research Report
ソバアレルゲン低減化のための種子貯蔵タンパク質組成の変動解析
Project/Area Number |
20580013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 朋之 (勝部 朋之) 京都大学, 農学研究科, 准教授 (50224473)
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Keywords | ソバ / アレルゲン / 貯蔵タンパク質 |
Research Abstract |
ソバは他殖性・無限伸育性で脱粒・倒伏しやすいために主要毅類に比べ生産性(収量)が極めて低いものの、栽培生育期間が短く、やせ地・乾燥地などの不良環境下でも育ち、病害虫・雑草の害を受けにくい。また、血圧上昇を抑える作用のあるルチンを多く含み、バランスの取れたアミノ酸組成を有することから、その生産が改めて見直されている。一方、ソバは深刻なアレルギーを引き起こす場合があり、その原因物質(アレルゲン)を同定し取り除く研究が強く求められている。これまでに、13Sグロブリンのβ鎖(24kDa)等が主要アレルゲンとして同定されている。また、IgE抗体との反応性の違いから、ソバ13Sグロブリンのサブユニット組成を変えることで、アレルゲン性を改善できる可能性が示唆されている。そこで本研究では、ソバ種子タンパク質の組成変動を詳細に解析することにより、ソバ種子の優れた特性を損なうことなくアレルゲン性を低下させるための基礎的知見を得ることを目的とした。2D-PAGE法やイネグルテリン抗体/ダイズグリシニン抗体等を組み合わせたタンパク質解析、ならびに13Sグロブリンα鎖に見出された反復挿入配列部位に着目したPCR法により、(1)13Sグロブリンの多くはメチオニン含有率の低いサブユニットから構成されること、(2)13Sグロブリンα鎖の変異の大部分は反復挿入配列の長さの違いで説明できることを見出した。さらに、(3)反復挿入配列を有しないα鎖はトリプシンに対する消化性が低く、アレルゲン性が他のα鎖と異なる可能性が示唆された。一方、窒素・硫黄施肥条件を変えて栽培した自殖性ソバ種子のサブユニット組成に変動は見出されなかった。以上のことから、反復挿入配列の有無に着目して遺伝学的にサブユニット組成を変えることが、ソバの低アレルゲン化に有効である可能性が示唆された。
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