2009 Fiscal Year Annual Research Report
イネ科植物由来の高kcat Rubiscoを利用したイネの光合成能力の改良
Project/Area Number |
20580014
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
深山 浩 Kobe University, 農学研究科, 助教 (60373255)
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Keywords | 光合成 / Rubisco / 酵素特性 / 相同組換 / イネ |
Research Abstract |
これまでの研究からRubiscoの反応回転速度K_<cat>が顕著に高かったSorghum bicolorのRubiscoをイネで発現させることを試みることとした.RubiscoはRbcLとRbcSの2種類のサブユニットで構成されており,酵素特性を決める上でRbcLが重要と考えられるが,RbcSもカルボキシレーション効率に関係することが分かっている.そこで,ソルガムのRbcLとRbcLそれぞれをイネに遺伝子導入することとした. S.bicolorのRbcLの配列はGenbankに登録されており,その全長をPCR法により増幅した.RbcLは葉緑体DNAにコードされていることからS.bicolorのRbcLをイネのRbcLの5'上流域と3'下流域で挟んだキメラ遺伝子を含む相同組換用プラスミドを作成し,パーティクルガンによる遺伝子の導入を試みた.また,葉緑体形質転換の効率を改善させるためにカルスで葉緑体を発達させるGLK高発現イネを材料に用いた.現在までに多数の再分化個体が得られたが,今のところ導入遺伝子は確認できていない.現在,選抜条件,再分化条件について検討を行っている. RbcSは核の多重遺伝子族にコードされている.そこで,緑葉内で最も発現の高いRbcSを特定し,全長をクローニングしてイネにアグロバクテリウム法で遺伝子導入した.プロモーターにはCabを用いた.多数の形質転換イネが得られ,その中からソルガムRbcS発現量が全RbcSの30,44,79%の異なる3つのホモ系統を選抜した.形質転換イネにおけるRubicsoのkcatはイネの1.3-1.5倍と有意に増加した.BN-PAGEでは,ソルガムRubicsoはイネRubicsoよりも見かけの分子量が少し小さいが,ソルガムRbcSを発現させた形質転換イネのRubiscoでは,ソルガムRbcSの発現レベルが高くなるにつれて見かけの分子量がソルガムに近づく傾向が認められた.以上の結果から,ソルガムRbcSの部分的なイネRubiscoへ組み込みが全体的な立体構造の変化を引き起こしkcatを増加させたものと考えられた.以上のようにソルガムRbcSの高発現のみでRubiscoの活性を高めることに成功し,この点は光合成の改良を図る上で大変重要な発見となった.しかし,形質転換イネの光合成速度は増加しなかった.形質転換イネではRubicsoの含量が増加していたことから,今後RNAi法などによりRubicso含量を適切にコントロールすることができれば,光合成速度の改良も可能であろうと考えられた.
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Research Products
(9 results)