2010 Fiscal Year Annual Research Report
水稲の穂培養法を用いた籾中の窒素代謝と炭水化物代謝との関連性の解明
Project/Area Number |
20580015
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 教授 (30182447)
|
Keywords | 水稲 / 登熟 / 窒素代謝 / 日射 / 穂培養 / 籾殻 |
Research Abstract |
水稲の穂首節下第1節間で切断した穂を液体培地に挿して、ソース能力を任意に定める穂培養法を用いて、穂部の窒素代謝と炭水化物代謝との関連性の解明を試みている。 液体培地のアンモニア態窒素濃度が高いものほど穂重増加が緩慢で、穂の含水率が高く、液体培地の吸収量は低い値であった。この原因は、過剰なアンモニア態窒素を吸収したことにより、玄米で糖からデンプンへの合成が抑制されたことで、穂重増加が緩慢であったこと、籾中に蓄積した糖のために穂の含水率が維持されて、液体培地の吸収が抑制されたものと推察した。 また、前年度の実験で、穂培養法実験下で穂に太陽光が当たると粒重増加が増大する現象を認めたため、この現象の原因解明を行った。太陽光を遮り、LED光(青色光および赤色光)を照射して粒重増加を検討したが、いずれのLED光でも粒重増加に差は認められなかった。これより、粒重の増大には太陽光の照射が有効であると言えた。 日射による粒重増大の原因として、籾殻の光合成が粒重増加に寄与している可能性および日射が穂部での糖代謝に関与している可能性が推測できた。籾殻光合成の粒重増加への寄与率(籾殻増加量/籾増加量×100)は最大で23%であった。一方、日射が穂部での糖代謝に関与している可能性について検討するために、籾殻に含まれる全糖含有率を調査した。遮光下の籾殻中全糖含有率は日射下よりも若干低いものの、玄米で合成されるデンプンの基質として十分にあると考えられた。これより、日射が籾殻から玄米への糖の移行に関与している可能性は低く、玄米中のデンプン合成に日射が関与していることが示唆された。 これらより、日射による籾千粒重の増大は、籾殻の光合成による増加と、玄米中での糖からデンプンへの転換が活性化されたことに起因しているのではないかと推察された。
|