2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホウレンソウ低シュウ酸突然変異系統の生態反応特性に関する栽培学的研究
Project/Area Number |
20580028
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村上 賢治 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40200266)
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Keywords | ホウレンソウ / シュウ酸 / 突然変異 / 抽苔 |
Research Abstract |
ホウレンソウは長日下で抽苔するため,春から初夏の栽培では晩抽性形質が必要となる.これまでの研究において育成された低シュウ酸突然変異系統は,元の品種である'新日本'野生型と同様に長日に敏感で,春季の栽培では収穫に適した大きさに成長する前に抽苔した.平成22年度の実験では,低シュウ酸突然変異系統に晩抽性品種'ノーベル'を交配し,後代での選抜による低シュウ酸・晩抽性系統の育成を行った.なお,これまでの実験で低シュウ酸突然変異形質は単一の劣性遺伝子関与であることが明らかになっている. 低シュウ酸突然変異系統に'新日本'野生型を交配し,F_2世代で分離した低シュウ酸株に'ノーベル'を交配した.このF_1を自殖させたF_2種子を播種し,F_2集団から晩抽性株を選抜して自殖種子を採種した.F_2集団においては,低シュウ酸形質と抽苔の早晩性に関連性はみられず,低シュウ酸・晩抽性の個体の選抜が行えることが示された.選抜した低シュウ酸・晩抽性株の自殖種子を10月1日に播種し,20℃・14時間照明の人工気象器内または自然日長・無加温ガラス室内で栽培した.比較のため'新日本'野生型,元の低シュウ酸突然変異系統および'ノーベル'も同様に栽培した.選抜株後代における20℃・14時間日長下での抽苔までの平均日数は66.6日で,元の低シュウ酸突然変異系統より約20日抽苔が遅くなり,晩抽性の形質に改良されたことが示された.ガラス室内の栽培試験の結果では,選抜株後代の地上部シュウ酸濃度は,'ノーベル'や野生型系統の約5分の1であり,明らかに低シュウ酸形質を示した.また,選抜株後代の地上部生体重は,'新日本'野生型や'ノーベル'と有意差が無く,それらと同等の生育を示した. 以上の結果,晩抽性品種との交配とF2世代での選抜により低シュウ酸で晩抽性の系統を育成できることが示された.
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