2009 Fiscal Year Annual Research Report
タバコモザイクウイルス抵抗性のシグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
20580049
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
瀬尾 茂美 National Institute of Agrobiological Sciences, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80414910)
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Keywords | 植物病理 / シグナル伝逹 / 植物 / ウイルス |
Research Abstract |
タバコモザイクウイルス(TMV)抵抗性遺伝子Nを有するタバコ(NNタバコ)は、TMVに対して抵抗性を示す。TMV抵抗性に果たすWIPKとSIPKの役割の解明を目的として、RNAiにより両MAPKを抑制した形質転換NNタバコ(WIPK/SIPK抑制NNタバコ)を作出した。前年度までに、TMVを接種したWIPK/SIPK抑制NNタバコでは、接種葉における壊死斑サイズの減少と相関してTMV量は減少(つまり、TMV増殖に対する抵抗性が増大)することを報告した。今年度はWIPK/SIPK抑制によるTMV増殖抑制の機構を明らかにすることを目的として研究を進めた。まず、TMV抵抗性のシグナル伝達で重要な働きをすることが知られているサリチル酸(SA)に着目、WIPK/SIPK抑制NNタバコでの変動を調べた。WIPK/SIPK抑制NNタバコでは、非抑制体と比較して接種葉におけるSAの蓄積は増加した。それに対し、別の病害抵抗性シグナル物質であるジャスモン酸(JA)に関しては、蓄積の減少が観察された。そこで、この抑制体にSA加水分解酵素をコードするNahG遺伝子を再導入してSA蓄積を抑制、あるいはJAを外生的に与えると、TMV増殖抑制は打破された。一方、WIPKとSIPKを抑制したN非保有タバコの接種葉におけるTMV量は非抑制体と同程度であった。以上の結果から、N遺伝子の下流で活性化されるWIPKとSIPKはSA蓄積の抑制とJA蓄積の増強を介して、感染部位でのTMV増殖抑制にはむしろ阻害的な効果を持つことが示唆された。
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