2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物毒利用昆虫におけるアルカロイド摂取の進化起源-特に生殖能力増進作用の評価
Project/Area Number |
20580054
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
本田 計一 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00238809)
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Keywords | アルカロイド / 生理活性 / 昆虫 / 配偶行動 / 性フェロモン / 防御物質 |
Research Abstract |
〈全般に共通する結果〉1.植物花穂中の含有PA類の分析:鹿児島県採集のスイゼンジナおよび八重山諸島で採集のモンパノキの花穂に含まれるPA分析を行試みたが、両者からはPAの存在を確認できなかった。一方、広島県採集のヨツバヒヨドリの花穂からはlycopsamine(L)とintermedine(I)を確認した。2.PA類の化学受容感覚器の同定と電気生理学的応答:昨年の結果を踏まえて、主に嗅受容器に関して詳細な実験を行った。前脚〓節先端部のSEM観察を行ったところ、多数の15~2.0μmサイズの錐状感覚子が見出された。TR法によりI/Lに対する電気生理学的応答を調べたところ、3種のマダラチョウ雄成虫から特有の応答を観測した。この感覚子は基本的に味受容器と判断されるが、嗅受容器としての機能も担っていると推察され、機能が不明であった雄の前脚の意義が初めて明らかになった。 〈アサギマダラに関する結果〉PAの摂取が雄の配偶行動の活性化におよぼす効果:昨年に引き続き追試験を行い、PA摂取による雄の求愛行動の顕著な活性化を確認した。従って、PAは単に性フェロモンの前駆体であるのみならず、むしろ配偶行動における必須の活性化剤としての機能の方が重要であると考えられた。これはPAの機能に関して特記すべき新知見であり、PA摂取の進化起源やその形質の維持機構の解明に大きく貢献する。〈リュウキュウアサギマダラに関する結果〉受精・精子生産におよぼすPA摂取の効果:雄をPA摂取群と非摂取群に分け、雌を含むそれぞれの個体群を別々に5世代累代飼育し、各世代の性比(雄/雌)と卵受精率・孵化率を調べたところ、PA摂取群では性比や卵受精率・孵化率がほぼ一定に保たれていたが、非摂取群ではいずれも顕著に低下し、PAの摂取は個体群の維持に必須であることが判明した。この事もPAの機能に関して特筆すべき新たな知見であり、その意義は大きい。
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Research Products
(7 results)