2009 Fiscal Year Annual Research Report
高い殺虫活性を示す新規フォトラブドス属細菌の病原性因子と宿主応答
Project/Area Number |
20580056
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉賀 豊司 Saga University, 農学部, 准教授 (00312231)
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Keywords | 昆虫病原性 / 線虫 / Photorhabdus / Heterorhabditis |
Research Abstract |
土壌害虫に対する生物的防除資材として用いられる昆虫病原性線虫は特殊な腸内細菌と相互依存的共生関係をもつ。Heterorhabditis属線虫と共生関係をもつPhotorhabdus属細菌は昆虫の血体腔内では、感染初期には主に昆虫体液中で増殖することが知られている。そのため、体液中で細菌が増殖する際に分泌する因子によって昆虫は死亡する可能性が高いことが考えられた。そこで細菌注入によってひん死状態になった昆虫から体液を取り出し、SDS-PAGEによって、細菌由来または細菌感染によって変化の生じる血しょう中のタンパク質の検出を試みた。細菌注入後、死亡するまでの間に、新たなタンパク質のバンドは検出されず、細菌由来と思われるタンパク質は得られなかった。しかし、幼虫の主要なタンパク質である貯蔵タンパク質の量に大きな違いが見られ、強病原性株CbKj163を1×10^2細胞注入したアワヨトウ終齢幼虫は貯蔵タンパク質が対照区よりも少なかった。人工飼料を用いてアワヨトウ幼虫の摂食量を比較した結果、CbKj163を1×10^2細胞注入したものは対照区に比べて摂食量は約2/3で、体重の増加量も約1/5と非常に低かった。以上の事から、共生細菌が感染し、宿主昆虫が死に至までに、昆虫の血しょう中にはSDS-PAGEなどで検出できるほどの細菌由来のタンパク質は出現しない事が明らかになった。また、感染した宿主昆虫は急激に摂食量が低下し、その結果、体重が増加せず、貯蔵タンパク質も合成されないことが明らかになった。細菌感染によって、宿主昆虫の腸または神経系の細胞に細菌が直接感染するか間接的に作用することで摂食が抑制されること、また、それによって昆虫は死亡することが示唆された。
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