Research Abstract |
これまでの研究で,黒ボク土のアルミニウム(Al)毒性あるいは可給性には腐植複合体Alが大きく関与しているとみられた.本年度は,Al感受性作物(ゴボウ,オオムギ)を用いて,非アロフェン質黒ボク土の未耕地2点(東北大学複合生態フィールドセンター(川渡)),自然状態に近いアロフェン質黒ボク土2点(盛岡,つくば),酸性化したアロフェン質黒ボク土3点(宇都宮,十和田)のAl毒性をみた.また,これらの土壌にAl集積植物であるソバを生育させ,Al吸収量を分析した.その結果,Al感受性植物への毒性は非アロフェン質土壌だけではなく酸性化したアロフェン質土壌でもみられ,これらの土壌ではソバによるAl吸収量も多くなっていた.酸性化したアロフェン質土壌でのAl溶解性は,非アロフェン質土壌と同様に,腐植複合体Alに制御されており,Al毒性が発現するとみられた. 毒性Alの指標として用いられている1M塩化カリウム抽出Al(KCl-Al)は永久荷電に吸着されているAlを抽出すると言われている(いわゆる,交換性Al).永久荷電量を測定してKCl-Al量と比較した.また,データベースを用いてKCl-AlとpH(KCl)の関係を調べた.その結果,KCl-Alは腐植複合体Alも評価し,抽出時のpHに依存するため,必ずしも交換性Alを測定するものではないことが示された. 非アロフェン質黒ボク土(川渡土壌)およびアロフェン質黒ボク土(盛岡土壌)の活性Alの状態を変化させ,それが腐植の安定性や窒素動態に及ぼす影響について化学分析と微生物群集解析(PCR-DGGE法)で調べた.すなわち,無処理,石灰処理,石こう処理等の土壌について,有機窒素の窒素無機化と硝酸化成をみるための培養実験を行い,培養前後の土壌からDNAを抽出した.石灰処理は窒素動態に大きく影響したが,石こう処理はほとんど影響を与えなかった.微生物群集解析の結果,CaCO_3処理でその多様性が増加することがわかった.
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