2010 Fiscal Year Annual Research Report
連鎖球菌におけるヘパリン分解・輸送系の構造・機能相関とその感染症への関与
Project/Area Number |
20580078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
橋本 渉 京都大学, 農学研究科, 准教授 (30273519)
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Keywords | 連鎖球菌 / グリコサミノグリカン / 不飽和グルクロニルヒドロラーゼ / X線結晶構造解析 / コンドロイチン二糖 / 硫酸化糖 / 多糖リアーゼ / 部位特異的変異 |
Research Abstract |
本研究では、連鎖球菌のヘパリン分解・輸送系に焦点を当て、細菌生理学と分子・構造生物学的解析により、その遺伝子クラスターの感染過程への関与及びヘパリンリアーゼ(HepC)と不飽和グルクロニルヒドロラーゼ(UGL)の構造・機能相関を明らかにする。本年度の成果は以下の通りである。 (1) ヘパリンリアーゼ HepCの分子多様性を解析するため、各種DNA/タンパク質データベースを用いて、ホモログ遺伝子をもつ生物種を検索した。その結果、多数の連鎖球菌を始め、腸球菌、ウェルシュ菌やバクテロイデス菌など、哺乳類の細胞に感染する細菌群がHepC遺伝子をゲノムに持つことが分かった。また、それらの生物ゲノムにおけるHepCの遺伝子座位がUGL遺伝子の近傍に位置することを明らかにし、ヘパリン分解・輸送系に関わる遺伝子クラスターが哺乳類細胞との相互作用に深く関わることを示唆した。 (2) 不飽和グルクロニルヒドロラーゼ UGLは、多糖リアーゼ反応により生じたビアルロン酸、コンドロイチン、ヘパリン由来不飽和二糖に作用するため、グルクロン酸とイズロン酸を含む全ての不飽和グリコサミノグリカン二糖を分解することが分かった。UGL変異体と基質との複合体の構造解析から、基質の認識に関わるループ(残基番号:219-236)がフレキシブルな構造をとることが明らかになった。ループに位置するThr-235は基質と相互作用し、その変異体T235Aでは基質との親和性が顕著に低下する。従って、ループの動的構造は、基質を活性部位に固定するために重要であることが示された。
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