2008 Fiscal Year Annual Research Report
鉄酸化細菌由来新規有機水銀分解酵素の分子生物学的解析とその利用
Project/Area Number |
20580079
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
杉尾 剛 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (20033269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 文章 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (90294446)
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Keywords | mercury reduction / mercury volatilization / mercury resistance / Acidithiobacillus ferrooxidans / organomercury lyase / cytochrome c oxiase / iron-oxidizing bacterium / sulfur-oxidizing bacterium |
Research Abstract |
地球の環境浄化・保全は、21世紀、人類に果たせられた最も重要な課題の一つである。重金属のなかでも特に水銀は魚介類などに容易に蓄積されるため人々の健康に重大な影響を及ぼす。本研究は、無機および有機水銀を金属水銀に変換できる高度水銀耐性鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidans MON-1株の特徴ある水銀還元酵素活性を、まず分子生物学的に解析した後、更に、その知見を水銀汚染土壌から微生物的に水銀を気化・回収する「バイオレメディエーション技術」へ導いていこうとするものである。平成20年度は、主として下記の5項目を明らかにした。(1)A. ferrooxidans MON-1株を電気培養法を用いて培養し水銀気化酵素の完全精製をめざした。まず、電気培養条件の最適化を試み、14日間の培養で1リットル当たり400mgの菌体を得ることが可能となった。一方、通常のバッチ法による培養では1リットル当たり10mgの菌体しか得ることができないので電気培養法により約40倍収量が増加したことになり、酵素の精製が容易になった(研究分担者)。(2)有機水銀分解酵素(MerB様タンパク質)を上記電気培養したHON-1株から精製することを試みた。洗浄細胞を2%の1-0-n-octyl-β-D-glucopyranoside(OGL)と1MのNa_2SO_4の存在下で可溶化した後、45%硫安分画、Phnyl-, Shephadex G-100-, Superdex-column chromatographyを用い水銀還元酵素を電気泳動的にほぼ均一に精製した(研究代表者)。 SDS-PAGEによるサブユニットの分子量、可視酸化・還元スペクトルの結果より精製酵素はaa_3型のcytochrome c oxidaseであることを明らかにした。本精製酵素を還元型mammalian cytochrome c及び無機水銀とインキュベートし金属水銀が気化されることを明らかにした。^<1)>また、驚いたことに、本精製酵素を還元型mammalian cytochrome c及び有機水銀(Methylmercury chloride, MMC)とインキュベートしたところ24時間のlag phaseの後に金属水銀が気化されることを明らかにした。以上の結果より、反応機構の詳細は現在不明ではあるが、aa_3型cytochrome c oxidaseが有機水銀から無機水銀を解離させるlyase活性をも持っていると考えている。従来、 A ferrooxidansには、水銀還元酵素遺伝子(merA)が存在しているが、organomercurial lyase遺伝子(merB)は全ゲノム中に存在していないことが報告されている。今回得られた知見は、 A. ferrooxidansに、従来報告例のない新しい有機水銀分解酵素の存在を示すものである。(3)従来、硫黄で増殖したA. ferrooxidanszの水銀還元機構に関する報告例はなかった。元素硫黄で増殖したMON-1株より水銀気化酵素の精製を試み、鉄生育電気培養菌と同様にaa_3型cytocbrome c oxidaseが水銀の気化を行うことを明らかにした(研究代表者)。(4)水銀耐性菌、感受性菌、中等度水銀耐性A. ferrooxidans株からaa_3型のcytochrome c oxidaseを均一に精製し、水銀耐性MON-1株は感受性のAP19-3株に比較して高度に水銀耐性を持つことを明らかにした(研究代表者)。MON-1株が持つ水銀耐性のaa_3型cytochrome c oxidaseの存在は、本酵素が水銀耐性に深く関わり、かつ重要であることを強く示唆している。^<1)>(5)ECDガスクロマトグラフィーを用い、反応溶液中のMMCの減少量を直接定量する方法でOrganomercurial lyase活性を測定する方法を確立した(研究分担者)。1)T. Sugio et al.,Biosci. Biotechnol. Biochem.,72,1756-1768(2008).
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Research Products
(9 results)