2010 Fiscal Year Annual Research Report
生物間相互作用に関わるセスキテルペンの構造多様性を生み出す遺伝的メカニズムの解明
Project/Area Number |
20580117
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木村 真 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (20261167)
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Keywords | マイコトキシン / 脱アセチル化酵素 / ムギ類赤かび病菌 / 二次代謝 / 遺伝子クラスター / 生合成 / セスキテルペン / 多機能酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニバレノール(NIV)型トリコテセン生産菌は、液体米煮汁培地中では4, 15-diacetylnivalenol(4, 15-diANIV)と4-acetylnivalenol(4-ANIV)を生産し、固体米培地上では4-ANIVとNIVを生産する。C-4位の脱アセチル化に関与する酵素遺伝子の取得を目的として、Fusarium graminearumのゲノムデータベースにおいて膜に存在するエステラーゼをコードする遺伝子の標的破壊を行なった。その結果、2番染色体に存在し447アミノ酸からなるエステラーゼをコードするFG_03846遺伝子を破壊するとNIV量が劇的に減少することを見出した。さらにこの破壊体に対してFG_03846大量発現ベクターを導入したところ、固体米培地上でのNIV生産能が相補された。またFG_03846大量発現体の菌体抽出液から、破壊体や野生株の菌体抽出液からは決して検出されることのない4-ANIVや4, 15-diANIVのC-4位脱アセチル化が観察され、in vitroの実験からもFG_03846遺伝子がC-4位脱アセチル化酵素をコードすることが明らかとなった。興味深いことにNIV生産菌をYG培地で培養してもC-4位脱アセチル化活性は検出されないが、トリコテセン非生産菌であるイネいもち病菌Magnaporthe oryzaeをYG培地で培養するとC-4位脱アセチル化活性が検出された。以上のことから、もともと生合成とは関係のない糸状菌の酵素が二次代謝に関与することでF. graminearumが4-ANIVではなくNIVを最終産物として生産するように進化してきた可能性が示唆された。
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