2009 Fiscal Year Annual Research Report
トリプトファン代謝鍵酵素の脳内免疫における役割と神経毒生成機構の解明
Project/Area Number |
20580122
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
江頭 祐嘉合 Chiba University, 大学院・園芸学研究科, 教授 (80213528)
|
Keywords | トリプトファン / ミクログリア / ナイアシン / キノリン酸 / ピコリン酸 / 神経毒 / キヌレニン |
Research Abstract |
トリプトファン・ナイアシン代謝の鍵酵素アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)は哺乳類の生体内において神経毒キノリン酸の産生に大きく関わる。一方、ミクログリア(脳のグリア細胞の一種)は神経細胞への病原体の侵入等を監視し、それらに対する生体防御反応の中心的な役割を担っている。しかし、これが異常に活性化した場合,様々な細胞傷害性因子を過剰に放出する。そこで本研究では、トリプトファン代謝主要酵素の生理的役割を調べる為、マウスのミクログリア細胞株MG6に炎症を誘発させ、ACMSDを含む主要トリプトファン代謝酵素の遺伝子発現を観察した。MG6を播種、培養後、リポポリサッカライド(LPS)を培養液に添加し、経時的にトリプトファン代謝系主要酵素の遺伝子発現を定量PCRで測定した。その結果、本実験条件下では、LPS添加数時間後にIDOの発現は上昇したが、ACMSDの発現は観察されなかった。一方、糖尿病時には脳、肝臓、腎臓のACMSD活性が上昇することが報告されている。トリプトファン代謝産物キヌレニン、ピコリン酸は免疫システムへ影響することが報告されている。そこで、正常または糖尿病ラットより分離した初代培養肝細胞を、標識したL-トリプトファン含有液中でインキュベーションすることによって生成した、標識されたL-キヌレニン、ピコリン酸の量を測定した。糖尿病肝細胞において生成し、細胞外に放出されたL-キヌレニン生成量は対照(正常)の約3倍以上であった。細胞内抽出液中に存在する量は両群とも検出限界以下であった。ピコリン酸は両群の細胞内抽出液中においてごく微量検出された。細胞外に放出されたピコリン酸は両群とも検出限界以下であった(Sasaki, Egashira, Sanada 2009)。L-キヌレニンは脳の血液脳関門を通過することが出来るので、糖尿病時の中枢神経系の合併症にキノリン酸を含めたこれらのトリプトファン代謝産物が関与しているか今後の検討課題である。
|