2008 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者に多発するビタミンB12欠乏性神経障害発症の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20580132
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡辺 文雄 Tottori University, 農学部, 教授 (30210941)
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Keywords | 食品学 / 栄養学 / 生理活性 / 老化 / 脳神経障害 / ビタミンB12 / 線虫 / 代謝異常 |
Research Abstract |
ヒトを含む哺乳動物のビタミンB_12(B_12)の生理機能やB_12欠乏症の発症メカニズムの解明にはラット等の実験小動物が広く用いられてきたが,未だB_12欠乏性代謝異常症や神経障害の詳細な発症メカニズムについて不明な点が多く残されている.そこで,個体発生機構・全ゲノム情報・ヒトの疾患遺伝子と相同性の高い遺伝子群の存在など生命機能の情報が豊富で,ヒトのモデル生物として広く用いられている線虫(Caenorhabditis elegans)に着目した.線虫を用いたB_12欠乏症モデル動物の調製法を確立する目的で,食餌性B_12欠乏が線虫に及ぼす影響を検討した,B_12制限食餌の調製は大腸菌OP50株をM9培地で振とう培養したものをB_12制限食餌として用いた.コントロールの生育条件として線虫(野生種N2)をB_12(100μg/1)を添加した培地を用いてB_12制限食餌で生育させた.B_12欠乏線虫はコントロール線虫をB_12無添加の培地に同一条件下で5世代継代的に生育させて調製した.生育の指標として産卵数と世代交代時間を測定した.またB_12欠乏の指標として体内メチルマロン酸量,ホモシスティン量,メチルマロニルCoAムターゼ活性,メチオニンシンターゼ活性をHPLC法で測定した.B_12欠乏条件下の線虫の産卵数はコントロール線虫より著しく減少し,世代交代時間は増加した.B_12欠乏の指標である細胞内メチルマロン酸レベルはB_12欠乏条件下で約3倍に上昇し,ホモシスティンも顕著に上昇した.B_12依存酵素メチルマロニルCoAムターゼはB_12欠乏条件下で約10倍に活性が上昇し,メチオニンシンターゼはB_12欠乏条件下1世代目から有意に活性が減少した,また,これらB_12欠乏条件下で線虫に生じた現象はB_12添加によりほぼ回復した.また,B_12欠乏条件下で太短い形態を有する線虫が約16%程度の頻度で観察され,現在,本変異体の神経および運動機能障害の有無を検討中である.
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