2010 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者に多発するビタミンB12欠乏性神経障害発症の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
20580132
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
渡辺 文雄 鳥取大学, 農学部, 教授 (30210941)
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Keywords | 食品学 / 栄養学 / 生理活性 / 老化 / 脳神経障害 / ビタミンB12 / 線虫 / 代謝異常 |
Research Abstract |
ビタミンB_<12>(B_<12>)は生体内でメチオニンの生合成やバリン・イソロイシンなど分岐鎖アミノ酸の異化代謝に関与することから、B_<12>欠乏が線虫のアミノ酸代謝に及ぼす影響について検討した。特にオルニチンから合成され神経機能を調節するポリアミンの代謝については詳細に検討を加えた。B_<12>欠乏条件下で生育させた線虫ではB_<12>欠乏症のバイオマーカーであるメチルマロン酸・ホモシステインが著しく蓄積し、B_<12>依存性酵素メチルマロニルCoAムターゼ活性・メチオニンシンターゼ活性が顕著に低下したことから、B_<12>制限食餌により線虫がB_<12>欠乏症を呈することを確認した。このB_<12>欠乏線虫では生体内メチル基供与体であるチアデノシルメチオニン(SAM)の著しい減少とその代謝産物でありメチル化反応を阻害するチアデノシルホモシステイン(SAH)の増加が見られ、生体内メチル化反応の指標であるSAM/SAH比は顕著に減少した。一方B_<12>依存性酵素活性の低下に伴いバリン・イソロイシン・トレオニン・シスタチオニン・ホスホエタノールアミンが有意に増加し、メチオニンが減少した。さらにB_<12>欠乏線虫においてオルニチンが顕著な増加を示したため、体内ポリアミン量の変動を検討したところプトレスシンでは有意差が見られなかったが、スペルミジンが著しく減少していた。またポリアミン合成の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ活性はB_<12>欠乏線虫で顕著な上昇を示したが、ポリアミンの合成にはSAMが必須であるため、SAMの減少によるメチル化反応の低下がB_<12>欠乏線虫のポリアミン代謝に大きな影響を及ぼしていると推察される。これらアミノ酸の代謝異常は複合的に神経細胞に作用し、神経伝達の非効率化、イオンチャネル型受容体(NMDA受容体)の撹乱ならびに神経細胞死を誘発することが推定された。
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