2010 Fiscal Year Annual Research Report
食品成分の分子標的としてのアンドロゲン受容体シグナル伝達機構に関する研究
Project/Area Number |
20580141
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山地 亮一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00244666)
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Keywords | アンドロゲン / アンドロゲン受容体 / 低酸素 / 低酸素誘導因子-1α / β-カテニン / バイオアッセイ / 食品成分 / 前立腺がん |
Research Abstract |
転写因子である核内受容体ファミリーの一員のアンドロゲン受容体(AR)は、男性ホルモンのアンドロゲンと結合して、正常な前立腺組織の発達や維持だけでなく、前立腺がん細胞の増殖や進行に関与する遺伝子のアンドロゲン応答配列(ARE)に結合して、これらの遺伝子の発現を調節する。ARが転写因子として機能する際にコアクチベーターが動員され、ARの機能は亢進する。つまり前立腺がんで発現の亢進する、あるいは特異的に発現するコアクチベーターは前立腺がんの増殖を特異的に調節する因子であると言える。前立腺がんは去勢(血中のテストステロンレベルは正常時の1/10となり低レベルになる)によるアンドロゲン除去治療により一旦増殖がおさまるが、2-3年後にアンドロゲン耐性の前立腺がんとして再発する。前立腺がんを含む多くの固形がんの生育する環境は低酸素であり、また去勢は低酸素を誘発する。そこで低酸素によるARの転写活性化に及ぼす効果を検討したところ、低アンドロゲンレベルでのみ低酸素がARの転写活性を亢進することを見いだし、その分子機構に低酸素応答遺伝子の発現を調節する主要な因子であり、低酸素下でのみ発現する低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)が関与していることを証明した。HIF-1αの過剰発現ではARの転写活性に影響がないが、前立腺がんで発現の亢進する既知のARコアクチベーターであり、HIF-1α結合能を有するβ-カテニンが低酸素下でのARの転写活性亢進に寄与することを明らかにした。転写活性化機構は、ARのN末端とC末端がリガンド依存的に結合するが、HIF-1αがARのN末端ドメインと、β-カテニンがARのC末端ドメインと結合し、さらにHIF-1αとβ-カテニンが結合することによってARの転写活性を亢進することが判明した。さらに組換えタンパク質を作製し、AR・HIF-1α・β-カテニンの複合体形成を証明した。これらの分子機構を利用したアンドロゲン/抗アンドロゲン活性物質探索のバイオアッセイ系を酵母で構築し、食品成分の抗アンドロゲン活性を評価した。
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