2008 Fiscal Year Annual Research Report
樹木に胴・枝枯病害をおこすBotryosphaeria属ホロモルフの分子系統解析
Project/Area Number |
20580160
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
矢口 行雄 Tokyo University of Agriculture, 地域環境科学部, 教授 (50157971)
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Keywords | 樹木胴・枝枯性病害 / Guignardia属菌 / Botryosphaeria属菌 / カラマツ先枯病菌 / 遺伝子系統解析 / Botryosphaeria laricina |
Research Abstract |
樹木に胴・枝枯性病害をおこす病原菌のうちGuignardia属菌ではなくBotryosphaeria属菌ではないかといわれている病害である日本産カラマツ先枯病菌の所属の再検討を行った。 森林総合研究所に保存されている1949年〜1988年の分離菌および、著者が2008年に分離した菌株から菌叢の比較と遺伝子系統解析を行なった結果、菌叢は白色〜灰色で気中菌糸を形成し、裏面は褐色〜黒色を呈するなどBotryosphaeria属菌の不完全時代の特徴を示した。またその色と気中菌糸の特徴でグループ分けができたものの、カラマツ先枯病菌として一様の特徴を持っているとはいい難い結果であった。 遺伝子系統解析を行なった結果、属間の同定を試みた28SrDNA領域では、本研究で供試した菌株は全てBotryosphaeria属菌のクレードに含まれた。また、ITS1-5.8S-ITS2領域を用いて検討した病原菌の種も、すべて同一のクレードに含まれるという結果が得られた。このことから、属レベルの同定は菌叢判断でも充分に対応できるが、Botryosphaeria属菌の種の検討は、菌叢判断では困難なため、ITSI-5.8S-ITS2領域を用いて遺伝子系統解析を行なうことが有効であると考えられた。また今回、相同性検索をおこなったDDBJのデータベースには、B.laricinaの28S領域における塩基配列の情報が登録されていなかったため、本研究に供試した菌株とB.laricinaとの相同性を検討することができなかった。B.laricinaは、現在、日本と中国からのみ報告がなされており、世界的に他の種に比べて少ない種である。系統樹において同一のクレードに混在していたB.australisおよびB.luteaとB.laricinaの関係を述べた例は無く、今後,これらの遺伝子データのさらなる構築が望まれる。
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