Research Abstract |
樹木に胴・枝枯性病害をおこす病原菌のうちGuignardia属菌ではなくBotryosphaeria属菌ではないかといわれている病害である針葉樹暗色枝枯病の所属の再検討を行った。 遺伝子系統解析を行なった結果、本実験に供試した17菌株は,高いブートストラップ値に指示されBotryosphaeria属菌のクレードに含まれた。また,種レベルでは5菌株がB.ribis,7菌株がB.parva,5菌株がB.dothideaに分かれ,それぞれ高い相同性を示した。また形態観察では、子嚢殻は全8標本中,6標本から観察され,病斑部に形成された子座が樹皮下に埋没し,成熟すると孔口をもつ子嚢室が観察された。子嚢は無色,幅広い棍棒状,頂端は肥厚し,8個の子嚢胞子を不整2列に含んでいた。子嚢胞子は無色,単胞,紡錘形から広楕円形で,大きさは21.1×7.8μm(平均)であった。分生子殻は3標本および2菌株から観察され,黒色,亜球形で頂部に孔口を有していた。また,分生子は無色,単胞,長楕円から紡錘形,基部が裁断状で,大きさは20.4×5.9μm(平均)であった。 以上の結果より,針葉樹暗色枝枯病菌の完全時代は,形態観察からGuignardia属菌ではなくBotryosphaeria属菌の特徴を示した。さらに不完全時代は,Fusicoccum属菌の特徴を示した。また,遺伝子系統解析の結果から,B.parva(=F.parvum), B.ribis(=F.ribis)およびB.odthidea(=F.aesculi)の3種に分かれた。 これらの結果から,B.parvaとB.dothideaは,不完全時代の分生子の形態が異なるため,顕微鏡下で容易に識別できる。しかし,B.ribisは形態的にB.parvaとB.dothideaに類似しているため同定が困難であり,遺伝子系統解析が有効な手法となる。
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