2009 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の分子系統と動植相互作用系に着目した化学的防御と投資配分機構の実証的研究
Project/Area Number |
20580166
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Research Institution | Hokkaido Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
関 一人 Hokkaido Forest Products Research Institute, 利用部, 成分利用科長 (20446313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
折橋 健 北海道立林業試験場, 利用部, 研究職員 (60446292)
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Keywords | 化学生態 / 針葉樹 / 植食性小型哺乳類 / 植物二次代謝物 / 生合成 / 植物成長 / 代謝コスト / 種分化 |
Research Abstract |
◆植食性小型哺乳類に対する針葉樹の化学的防御に関する二次代謝物を化合物レベルで検索する目的で、これまでの報告で化学的防御物質として示唆されている、針葉樹樹皮からの低極性有機溶媒抽出物を得た。抽出物を、各種、溶媒分離法、クロマト分離法を用いて、化学的防御候補物質として数種の化合物を単離精製した。また、本化合物を、赤外線分光分析法、核磁気共鳴分光分析法、質量分光分析法などの各種分光分析法により検討し、その化学構造を解析した。これらの化合物はイゾプレノイドに属し、精油や樹脂に含有する主要成分であることが確認された。◆植食性小型哺乳類に対する針葉樹の化学的防御物質を特定する目的で、樹皮における天然含有率に準じて、抽出物、画分、化合物を樹皮粉に添加・成形して人工飼料を調製し、処理区とした。これとは別に、抽出物、画分、化合物を添加しない人工飼料を調製し、対照区とした。林地で捕獲したのち、屋内で一定期間飼育した植食性小型哺乳類(野ネズミ)に対して、処理区および対照区の人工試料を同時に供試し、その摂食量を比較検討した。抽出物、画分を添加した処理区の摂食量は、対照区と比較して有意に低かった。数種の化合物では、天然含有率の添加レベルの処理区において、その摂食量は対照区と比較して有意に低かった。また、天然含有率より低い添加レベルでは、両者の摂食量に明らかな差は認められなかった。◆植食性小型哺乳類に対する針葉樹の化学的防御の一因として、おもに樹脂を組成するいくつかのイソプレノイドとその濃度に起因することが示唆された。イソプレノイドの生合成コストに関し、他の植物二次代謝物と比較して高いことが指摘されている。植物の化学的防御と成長との間にはトレードオフの関係が存在することが、植物防御戦略に関する最適投資配分理論として展開されており、今回の成果は樹木の化学的防御戦略を理解する上でも重要であると考えられる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Comparative analysis of diterpene composition in the bark of the hybridlarch F_1, Larix gmelinii var.japonica×L.kaempferi and their parenttrees2009
Author(s)
Satoh, M., Seki, K., Kita, K., Moriguchi, Y., Hashimoto, M., Yunoki, K., Kofujita, H., Onishi, M.
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Journal Title
Journal of Wood Science 55
Pages: 32-40
Peer Reviewed
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[Journal Article] Simultaneous quantification of plant glyceroglycolipids including sulfoquinovosyldiacylglycerol by HPLC-ELSD with binary gradientelution2009
Author(s)
Yunoki, K., Satoh, M., Seki, K., Ohkubo, T., Tanaka, Y., Onishi, M.
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Journal Title
Peer Reviewed
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