2010 Fiscal Year Annual Research Report
一回結実性ササ属の繁殖システムおよび実生更新が遺伝的動態に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
20580167
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00343814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 孝行 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (70353654)
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Keywords | オクヤマザサ / 実生更新 / 交配様式 / マイクロサテライト / 小面積単独開花 / ササ属 |
Research Abstract |
ササの一斉開花枯死現象については、その交配様式に疑問が多く他殖率を明らかにすることがまず第一歩となる。本研究計画では、札幌近郊で部分開花したオクヤマザサを用いて交配様式をより詳細に調べるために、種子を稈別に採取して分析を行った。オクヤマザサの部分開花は小面積単独開花がほとんどであるため、限られた個体由来のラメットが同時に開花するために自殖性が高くなっている。 ほとんどの稈では完全に自殖していたが、数本の稈で他殖が確認された。これらの稈における他殖率は0.3-0.7と自殖性の植物としてはかなり高い値を示した。これらの結果から、ササ属は完全自殖をすることから自家和合性を持つことが明らかになった。しかし、他殖の機会が与えられると、混合交配(mixed mating)を示す傾向が見られた。また、他殖している稈から採取した種子の中には母稈由来の遺伝子が欠落しているものが見られた。これについては、突然変異による対立遺伝子の欠落等さまざまな可能性が考えられる。ササ属と分類学的に近縁であるイネ科植物の繁殖様式に関して、過去の研究および文献情報による比較検討を行ったところ、イネ科植物での他殖率の値はかなり広い範囲をとることが明らかになった。このことから、ササ属においても他のイネ科植物同様に高い自家和合性をもつことと関係していると考えられる。つまり、稀な有性繁殖の機会では、たとえ単独ジェネットの開花であっても、組み換えを伴う種子繁殖を行うためには自家和合性が必要不可欠である。しかしながら、少しでも他殖花粉を受け取る機会があれば、新たな多様性を作出するために他殖に片寄った交配様式をとる機構が発達していると考えられる。前年度までに、分析実験および解析についてはほぼ終了したため、本年度は、主に成果発表を行った。
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Research Products
(3 results)