Research Abstract |
マツタケ育種のためには,まず1核菌株の取得が必要である.そのため,本年度は,まず,核相を調べるための分子マーカーとなる遺伝子を同定した.一つ目は,交配システムに関わる重要な遺伝子であるホメオドメインタンパク質遺伝子であり,周辺領域と合わせ,その塩基配列を決定し構造解析を行った.その結果,ホメオドメインタンパク質遺伝子とその周辺領域は,腐生菌とは全く異なる構造をしており,難培養性(人工栽培が困難である)の菌根菌に特徴的な構造があることが解った.詳細は,現在解析中であるが,このことが,人工栽培が難しい原因の一つであることが示唆された.もうひとつの遺伝子は,今回の育種目標にもあるデンプン利用の中心的な役割を担うと思われる酵素であるグルコアミラーゼの遺伝子である.本遺伝子も,全長の塩基配列を明らかにし,5'-RACE法や3'-RACE法を用いて,蛋白質をコードする領域を同定した.現在,その発現調節の仕組みについて解析しているところである.今後,これらの遺伝子を分子マーカーとして用いて,種々のマツタケ菌株の核相・核型を解析していく予定である.次に,一核株の分離のために,昨年度までに収集した2核菌株のプロトプラスト化の条件について検討を行った.市販の細胞壁溶解酵素を組み合わせて,5×10^5個程度のプロトプラストが得られるようになった.まだまだ,十分な量とは言えないため,現在,浸透圧調整剤,緩衝液の種類,新たな市販の細胞壁溶解酵素の組み合わせの検討を行っている,同時に,少ないながらも得られたプロトプラストを再生させるための,培地成分,浸透圧調整剤,緩衝液の種類についても検討を行っているところである.
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