2008 Fiscal Year Annual Research Report
母川刷込関連時期におけるサケ類嗅上皮の細胞動態と甲状腺ホルモンレセプター発現
Project/Area Number |
20580188
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 秀明 Hokkaido University, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40289575)
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Keywords | 母川回帰 / 嗅上皮 / 甲状腺ホルモン / 生理学 / 解剖学 / サケ |
Research Abstract |
本研究は,研究実施計画に沿って、サケ属魚類の母川刷込関連時期の嗅上皮の細胞動態と機能の状態の把握を試みたものである。初年度である本年度は,浮上後まもなく降海し,遡上は産卵期に近いシロザケ,および浮上後およそ1年間の河川生活の後に降海し,遡上は産卵期の約半年前に行われるサクラマスの各発育段階における嗅上皮を含む嗅房の発達を組織学的に解析した。解析には,嗅房形成としては嗅板数の計数を行い,細胞動態には第I脳神経である嗅神経束中の軸索密度から嗅房に含まれる嗅細胞数を算出した。嗅房は「短い中心隆起から放射状に配列する嗅板」を有し,初期生活史における嗅板数増加速度は両魚種間で類似していた。増加平衡後の嗅板数はシロザケで16〜21枚,サクラマスで12-15枚であった。新生される嗅板は嗅房中心隆起の吻側より形成され,古い嗅板は尾側で発達・大型化していた。若魚期以降の嗅板には二次褶曲が観察され,嗅板数が増加し複雑化した嗅板を取り巻く環境水の整流に寄与すると考えられた。両種ともに成熟途上魚以降の嗅細胞数は,嗅覚が高度に発達した哺乳類のものに匹敵し,既知の真骨魚類の嗅細胞数よりも非常に多いことが明らかとなった。シロザケおよびサクラマスの嗅細胞数は体サイズの増加に伴い増加した。尾叉長と嗅細胞数における相対成長式から両種において,両種ともに尾叉長が約350mm,嗅細胞数が約1,100万本の点に変曲点があることが確認された。母川刷込関連時期の嗅細胞数を比較すると,刷込時すなわち降河時期に相当するシロザケ稚魚で約18万細胞,サクラマス幼魚で約75万細胞,識別時すなわち産卵遡上前に相当する成熟途上魚の嗅細胞数はシロザケで約1,800万細胞,サクラマスで約1,600万細胞であった。以上の結果より,両魚種の嗅上皮における嗅細胞の生活史に伴う動態が明らかにすることができた。
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Research Products
(3 results)