2010 Fiscal Year Annual Research Report
母川刷込関連時期におけるサケ類嗅上皮の細胞動態と甲状腺ホルモンレセプター発現
Project/Area Number |
20580188
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 秀明 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 准教授 (40289575)
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Keywords | 母川回帰 / 嗅上皮 / 甲状腺ホルモン / 甲状腺ホルモンレセプター / 組織学 / サケ / 遺伝子クローニング |
Research Abstract |
本研究において,昨年度までに母川刷込関連時期(降海時および遡上時)が異なるサケ属魚類2種,シロザケおよびサクラマスの嗅覚器官(嗅房)における細胞動態の解析を行い生活史に伴う嗅細胞の「数的変化」を明らかにし,さらに母川刷込関連時期,特に降海期に顕著な血中濃度上昇を示し一般に細胞増殖に強く関与する内分泌因子として甲状腺ホルモンに着目し,その受容体である甲状腺ホルモンレセプター(TR)β遺伝子クローニングを行い「質的変化」の解析のためのツールを得た。そこで今年度は,検出可能となったTRβ遺伝子の発現量を各発育段階のシロザケ嗅房において半定量化した。その結果,沿岸域で捕獲された前期幼魚で若干の高値を示したが,発育段階に伴う大きな変化は認められなかった。成熟嗅細胞の指標となるolfactory marker protein(OMP)遺伝子の発現量は,淡水生活下の幼稚魚および淡水飼育下の後期幼魚において他の発育段階と比較し高値を示した。また,成熟魚のOMP遺伝子発現量は未成熟魚の発現量と比較し有意に高値を示した。TRβ遺伝子およびOMP遺伝子の発現量には,有意な相関は認められなかった。TRβ遺伝子およびOMP遺伝子発現量変化を初年度の研究における嗅板数および嗅細胞数変化と比較したところ,相関は認められなかった。シロザケTRβ遺伝子の発現は生活史を通じてほぼ一定で推移した。このことから,TRβは降海や遡上時などの母川刷込関連時期に相当する発育段階で血中甲状腺ホルモン濃度変化のようにピンポイントに発現増加を示すものではない可能性が示された。あわせて現在,サクラマスの嗅覚器官においてもTRβ遺伝子の発現が解析可能となるように検出反応の条件設定を進めている。
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Research Products
(6 results)