2010 Fiscal Year Annual Research Report
自然遺産知床・羅臼(らうす)の環境循環型漁業地域形成モデルの構築
Project/Area Number |
20580190
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古屋 温美 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 特任准教授 (20455588)
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Keywords | CO2収支 / LCA分析 / 廃棄物産業連関表(WIO) |
Research Abstract |
本研究の目的は、知床羅臼(らうす)をフィールドとして、漁村の二酸化炭素収支に着目した環境循環型漁業地域形成モデルを構築し、漁村における二酸化炭素排出量削減の意義を地球環境問題への対応という国民的視点に立って評価することである。今年度は、以下の2つの研究を行った。 (1)二酸化炭素排出削減量を貨幣換算し環境循環型漁業地域形成による知床羅臼地域への経済波及効果を算出する。算出方法は、羅臼町で作成した地域産業連関表を用いた。 ・二酸化炭素排出削減量は約32,000トン/年となり、EU排出量取引制度のクレジット料金約1,500円/トンを乗じ、48百万円/年の削減額と見積った。 ・48百万円を町の環境サービス業の最終需要として産業連関表を用いて、地域への経済波及効果を6百万円と推計した。 (2)本手法を同一の沿岸に属する漁業地域にも適用し、沿岸あるいは北海道沿岸全域など評価対象の範囲を広げて広範囲で評価する方法について考察する。 削減方法を原単位化した。たとえば、CO2を吸収する森林面積あたり、藻場面積当たり、産業部門別生産額当たりのCO2排出量を求めた。 本研究の意義と重要性について、水産業は自然環境に依存する産業であり、漁村は自然環境と共存することで持続可能となる。自然に対する負荷を低減し、低炭素化社会に向けて行動を起こすのは、自然とともに暮らす漁村の人であり、その人たちの行動や訴えが、都市部の人の心を動かすことができる。しかし、水産業の現状は低炭素化と程遠く、CO2排出削減対策はほとんどとられていない。このために、省エネルギー、資源の有効利用、再生可能エネルギーの利用、環境保全、自然の二酸化炭素吸収機能の持続、水産業に従事する人の意識改革、漁獲マイレージ・流通マイレージの削減など様々な取り組みが課題であり、それを経済面で後押しするカーボンプライシング政策など推進する必要がある。
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