2009 Fiscal Year Annual Research Report
資源量減少が著しいカワヤツメの生態学的・遺伝学的研究
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20580191
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
後藤 晃 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30111165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 裕治 富山大学, 大学院・理工学研究部, 准教授 (30332654)
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Keywords | カワヤツメ / 寄生・回遊性生活史 / アンモシーテス幼生 / 河川内ハビタット / 餌資源利用 / 集団内遺伝的変異性 / 遺伝子流動 |
Research Abstract |
カワヤツメの資源動態を探る基礎資料として、近年の資源量減少が著しい北海道石狩川集団を対象として、マイクロサテライト分析を行い、遺伝的集団構造を推定した。石狩川においては、古くから秋遡上群と春遡上群の存在が指摘されてきたが、これら遡上群の実態は解明されていない。そこで、石狩川下流部江別市において漁獲された1993年春の遡上集団、同年秋の遡上集団、および中流部に流入する支流において2007年に捕獲された幼生集団を解析に供した。その結果、各集団間における有意な遺伝的分化は認められず、またベイズ法に基づく集団構造推定においても、全集団は1つの遺伝的グループに由来することが示唆された。これらの結果から、各遡上群の遺伝的独自性は支持されなかった。一方、1993年集団と比較して、2007年度の集団においては、個体間血縁度のばらつきの増大、有効集団サイズの低下、さらに平均ヘテロ接合度において期待値に対する観察値の低下が示された。以上のてとから、近年の石狩川集団における遺伝的多様性の低下が懸念される。一方、本種幼生の生息個体数減少の要因を探る基礎調査として、微生息場所選択性と餌資源利用に関する野外調査と室内実験を行った。その結果、石狩川支流において小型群(全長1-5cm)は底質硬度が低く、流速が緩やかで、かつ底質組成がシルト質の場所を選好し、大型群(>5-15cm)では河床有機物が多く、底質硬度が低い場所を選好することが示された。また、各種類の餌を与えた水槽飼育実験とその後に幼生飼育個体の安定同位分析を行った結果から、カワヤツメ幼生は落葉リターから由来するデトリタスを主要な餌資源として利用しているてとが明らかになった。以上のことから、本種幼生が生息する河川環境として、軟泥の堆積が十分に存在する河川形態および餌の供給源となる河畔林の健全性が重要であると推察される。
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