2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20580194
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 博 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70261956)
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Keywords | 粘液胞子虫 / 吸虫 / 水産学 / 脳神経疾患 |
Research Abstract |
近年、海面養殖魚に異常遊泳をもたらす脳寄生虫病が増加している。本研究では、寄生虫(吸虫Galactosomum sp.と粘液胞子虫Kudoa spp.)による宿主の行動操作という観点から、宿主操作の実態およびメカニズムの解明を目的とした。 前年度、カタクチイワシに吸虫性旋回病が発生した香川県の海域で脳内吸虫の調査を行ったところ、2010年8月~11月に採集されたカタクチイワシの5%、マダイの2.3%、ウマヅラハギの4.3%に吸虫の寄生が見られた。また、寄生虫の形態学的観察から、カタクチイワシの虫はGalactosomum sp.に同定されたが、他の魚種の虫は別種であることが示唆された。Galactosomum sp.はカタクチイワシの遊泳行動を操作して(旋回遊泳させ)終宿主である水鳥による捕食を容易にすることから、カタクチイワシの資源量に少なからず影響を与えていると推測された。和歌山県内で養殖されるクロマグロの脳内粘液胞子虫を調査した結果、ある地域では既知種のK.yasunagaiが検出されたが、別の地域では新種Kudoa prunusiが優占しており、寄生率は100%に達した。K.prunusiはK.yasunagaiと形態的特徴のみならず、18S rDNAおよび28S rDNAの塩基配列によって明らかに区別された。病理組織学的には脳内にグリア結節などの病変が見られ、K.yasunagaiとは異なる(より強い)病害性を有することが示唆された。マグロの異常遊泳や衝突死との因果関係を証明するには至らなかったものの、魚体内における脳寄生Kudoaの経時的減少が宿主による殺虫作用であるとすると、宿主魚を行動操作して死に至らしめることは、魚体外に脱出する手段として有効なのかもしれない。
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Research Products
(4 results)