2010 Fiscal Year Annual Research Report
カレイ類の形態異常出現機構の解明と防除-最適な変態「前」成長速度の検討-
Project/Area Number |
20580202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 正朋 京都大学, フィールド科学研究研究センター, 准教授 (20226947)
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Keywords | カレイ類 / 形態異常 / 甲状腺ホルモン / 種苗生産 / タイミング説 / 耳石標識 / 成長履歴 / 両面有色 |
Research Abstract |
カレイ類では白化や両面有色と呼ばれる形態・色彩異常の個体が、種苗生産現場では多い時には80%以上も出現し、カレイ類の種苗生産を進める上での最大の障害となっている。本研究は、このような形態異常個体の出現を防除するために、形態異常の出現機構を変態生理にもとづいて明らかにするとともに、最適な成長速度を具体的に提案することを目的とする。 昨年度までの研究により、ホシガレイではD,Eステージまでの成長が劣っていた個体では白化する率が高かった。今年度、ホシガレイの白化を、Dステージまでの成長を促進することによって防除が可能かを予備的に検討し、水温による成長促進により白化の防除が可能であるとの見通しがついた。しかし、この点に関する大規模な本実験については、実験を行っていた宮古栽培漁業センターが東日本大震災による巨大津波によって壊滅したため、結果を得ることができなかった。 甲状腺ホルモンは成魚型の色素胞の分化に抑制的な作用を有することが、in vivoの実験から予想されている。そこで胚より分離した細胞をSeikai et al.1993に従って初代培養を試みた。仔魚型の各種色素細胞(黒色素胞・黄色素胞および白色素胞)については、これまでと同様に発現が観察されたが、Seikaiらの報告とは異なり成魚型の黒色素胞は発現が見られなかった。この試みは今年度で6年目になるが、これまで成功していない。今後は全く別の方向からの検討を計画している。 また、異体類の体色異常で出現頻度が高く問題となっている無眼側黒化(二次黒化)についての予備的な検討を今年度に行った。その結果、これまで広く信じられているような単なる黒色化現象ではなく、体表面の有眼側化である可能性がヒラメでは示唆された。このことにより、今後、無眼側黒化がいわゆる変態異常の一つとして位置づけられ、原因の解明につながると期待できる。
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Research Products
(3 results)