Research Abstract |
浮遊期魚類の調査は,湾奥部の六角川,早津江川河口域と,湾央部の菊池川河口域,湾奥部沖合,諌早湾の5水域にて行った.底生魚類の調査は季節に1回,諌早湾,湾奥部浅海域,湾奥部河口域の3水域で,桁網を用いて行った.湾奥部河口域は低塩分,高濁度,強混合で特徴づけられた.湾奥部河口域は,潮汐流と高濁度水塊が発達するという点で,湾央部とは異なっていた.浮遊期魚類の種数と密度は,諌早湾と湾奥部沖合に比べ,河口域で高い値を示したが,底生魚類のそれらには水域間で顕著な差はみられなかった.湾奥部河口域周辺では魚類,動物プランクトン共に特産種が優占し,その他の水域ではそれらはほぼ出現しなかった.よって,魚類の成育場は河口域に形成され,特に,特産種の成育場は,湾奥部河口域に限られていた. 諫早湾から湾奥部まで,動物プランクトン採集を年数回行った.Oithona davisaeが最も優占し,次いでParvocalanuscrassirostrisやMicrosetella norvegicaが多かった.最優占種O.davisaeは諫早湾内に比べて湾奥側で多くなっていた.また,有明海の動物プランクトン相と優占種の分布の長期経年の変化をみるために,2009年3月に,1972年に行われた同海全域にわたる動物プランクトン採集と同様の方法で調査を行った. 有明海奥部と諌早湾における懸濁物動態について検討した,透明度データを解析した結果,1996年頃を境にして,諌早湾以南の西部では透明度が上昇していた.これは,諌早湾内の低下・干潟が消失し,諌早湾内で表層まで巻き上げられる懸濁物量が減少したためと考えられる.一方,諫早湾口付近では,湾内底層の懸濁物質が諌早湾外に流出している様子もみられた. 筑後川下流・河口域と周辺の砕波帯で,仔稚魚の採集を行った.また,前年度までに採集されていた特産魚類の仔稚魚または成魚標本の内,アリアケシラウオおよびアリアケビメシラウオについては遺伝的多様度の経年変化についての分析を行い,エツについては対立遺伝子頻度の地域間比較を行った.
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