Research Abstract |
2010年度から,湾奥北東部の矢部川の調査を行ったが,その物理環境は六角川・早津江川とは大きく異なった.すなわち,潮流はさほど発達せず,濁度も低かった.しかし,冬季での沖合産卵由来で,河口域を必然的に成育場として利用する魚種(スズキ,コウライアカシタビラメ)は,矢部川の方が後二河川よりも圧倒的に多かった.矢部川よりもさらに南に位置する汀線でのスズキ稚魚の集積を考え合せると,湾奥部へ仔魚を運搬する有明海の恒流が弱くなった可能性が示唆された.各河口域で採集された浮遊期仔稚魚の種数と密度は諫早湾,湾奥部沖合に比べ,高い値であった.六角川河口域と早津江川河口域では,有明海特産種が優占する点で極めて共通していたが,種組成発育段階,密度で多少差がみられた.菊池川河口域では,出現種は前二河川とは大きく異なったおり,特産種は殆ど分布していなかった.諌早湾では極めて単純な仔稚魚相であった.着底期魚類,六角川河口域では多くの特産種と準特産種が優占する点でその他の水域とは異なっていた.水域間における類似度をみると,湾奥部の2河口域の浮遊期仔稚魚相は極めてよく類似していたが,湾中央部の菊池川および諌早湾のものとは異なっていた.また,一六角川河口域の着底稚魚群集はその他の水域と大きく異なっており,西部海域と諌早湾では類似度が高いことが明らかとなった 有明海のカイアシ類プランクトンの群集特性と湾内分布を,クラスター分析の結果,群集は湾奥~東湾央と西湾央~湾口の2つの地域的グループに分けられた.1970年代に行われた同様の研究のデータと比較分析した結果,有明海のカイアシ類優占種の構成と群集の水域区分は30年前と顕著には変わっていないことが示された
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