Research Abstract |
平成23年度では,従来通り,各月原則として2日間,東海大学所属北斗(20トン)を用い,駿河湾内の定点で近底層(海底上1-8m)の魚類プランクトン調査を実施した.調査測線は三保灯台沖の水深200→500mおよび500→1,000mで,採集にはろ過効率を向上させた口径1.3mのリングネット(目合い0.53mm)を用いた.また,10月に限り,本学所属望星丸(2174トン)を用い,駿河トラフ(水深約1,000-2,000m)において,近底層から表層までの採集を行った.この採集には,ろ過効率を向上させたアイザックキッド中層トロール(IKMT,目合い2mmと0.53mm)を用いた. 主な成果としては,望星丸によって駿河トラフから得られた深海性アシロ科魚類の日本初記録種に関する論文を2報(新称ナンヨウフクメンイタチウオとイシフクメンイタチウオ)公表した.これらに加え,北斗によって,駿河湾からホロタイプしか知られていなかったクサウオ科の稀種スルガインキウオの個体発育の論文をIchthyological Researchに投稿した(9月受理).スルガインキウオは,仔魚から成魚までが近底層に出現し,個体発育的鉛直移動を行わないことが明らかになった.したがって,深海近底層種には,(1)スルガインキウオのように,仔稚魚を通して近底層に出現するタイプ,および(2)平成22年度までに明らかにしたソコダラ科のように,仔魚はやや浮上し,稚魚から近底層に出現するタイプがあることが明らかにされた.今後,最終年度に向けて,深海近底層種の初期生活史を総括する.同時に,現在の調査を継続しながら,新たな深海ソリネットを考案し,現在,努力量が手薄な海底直上1m以下を曳網する方法を確立する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした5項目のうち,(A)海底谷近底層と陸棚斜面近底層の仔稚魚相,(B)セキトリイワシ科の個体発育,(C)成育場や食性の解明については順調に成果を得ている.これらは既に5報の査読付き論文によって公表されており,当初計画にはなかった日本初記録の深海性アシロ科魚類2種の報告も行っている.これらに加え,これも当初計画にはなかったが,クサウオ科の稀種スルガインキウオの個体発育の論文も受理されている.本研究の最終目的である(D)深海近底層性種の初期生活史の比較や(E)近底層の評価を行うためのデータも得られている.一方,今回,評価(1)としなかったことは,ニギス目ハナメイワシ科やハダカイワシ目ソトオリイワシ科などの仔魚の採集個体数が依然,少ないことによる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度である.既に得られたデータに基づいて,本研究の最終目的である(D)深海近底層性種の初期生活史の比較や(E)近底層の評価を行う. 一方,一部の分類群では,依然採集個体数が少ないため,従来の近底層(海底上1-8m)調査を継続する.また,この近底層調査では採集対象としていない海底直上から1mまでの範囲に生息する深海性仔稚魚を採集できるソリネットを考案し,実用化する.
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